※この記事は連載「不安だらけのエジプトひとり旅」の第㉒話です。初めての方はエジプトひとり旅15日間の全記録から読むと流れがわかりやすいです。
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この記事でわかること
- 朝8時台のルクソール神殿の混雑具合と、実際にかかった所要時間
- オベリスクが1本しかない理由(もう1本はパリにあります)
- 「自分大好きファラオ」だけじゃない、名前の上書き合戦の話
- 神殿が土に埋もれていた歴史と、宙に浮いて見えるモスク
- スフィンクス参道はなぜ造られたのか(オペト祭)
- 路上で『地球の歩き方』掲載ドライバーに遭遇した話
旅の実体験は2024年11月のものです。入場料などの変わりやすい情報は2026年9月時点でエジプト観光・考古省の公式チケットサイトを確認し直して記載しています。
なお営業時間・チケットの範囲・スフィンクス参道の「16時ルール」については、前回の㉑で現地看板の写真つきで詳しく書いています。これから行く方は、そちらもあわせてどうぞ。
朝8時過ぎ、リベンジのルクソール神殿へ
前回書いたとおり、この日の私は朝6時5分にルクソール神殿へ突撃して、あっさり門前払いを食らっています。看板には6時開場と書いてあったのに、です。
仕方なくホテルへ引き返して朝食を済ませ、屋上から気球を眺めて時間をつぶし——そして改めて、ルクソール神殿へ向かいました。
結果から言うと、この「出直し」が大正解でした。
ルクソール神殿は、カルナック神殿と並んでルクソールを代表する古代遺跡のひとつです。新王国時代(紀元前14世紀頃)にアメンホテプ3世によって建設が始まり、その後ラムセス2世らが増築を重ね、アメン神を祀る重要な宗教施設として栄えました。数千年前のファラオたちが歩いた空間を、今こうして実際に歩けるというのは、なんとも不思議な感覚です。
朝8時過ぎに到着し、入場料500EGPを支払い、いよいよ神殿の中へ入ります。
💳 後日カード明細を確認したところ、日本円でちょうど1,600円でした(2024年11月のレートです)。ちなみに2026年9月に公式チケットサイトを確認しても500EGPのまま。値上げラッシュが続くエジプトでは、なかなか珍しい据え置き組です。
門をくぐると、観光雑誌で何度も見たあの景色が目の前に広がっていました。

結果的に「8時台」がちょうどよかった
6時に入れなかったときは正直がっかりしたのですが、8時台に来てみるとチケット売り場は混んでいませんでした。並ぶこともなく、あっさり買えてしまいます。
神殿の中も同じで、朝8時台のルクソール神殿は混雑していませんでした。「世界的な観光地だし、この時間ならもう人だらけなんじゃ……」と少しビビっていた自分の心配はどこへやら、といった感じです。
日差しもまだ穏やかで、体力的にもかなり楽でした。
⏱️ 所要時間の目安
私は8時過ぎに入って、出てきたのが9:20頃。滞在時間は約1時間でした。
主要なところを写真を撮りながら見て回るなら1時間ほど、レリーフや細部までじっくり見たい方は1.5〜2時間みておくと余裕があると思います。観光のペースによって変わるので、あくまで目安として。
なお、入場料・営業時間・チケットで歩ける範囲・スマホ撮影の可否といったチケットまわりの詳細は、現地看板の写真つきで前回の記事にまとめています。朝イチ狙いの方は先にこちらを読んでおくと、私と同じ失敗をせずに済みます。
▶ 【エジプト旅行㉑】ルクソール神殿は何時から?6時開場なのに入れなかった朝|アザーンと気球の絶景
片方だけ残された「孤独なオベリスク」
神殿入口の第1塔門に立つと、誰もがある違和感に気づきます。門の前には巨大なオベリスクが1本立っていますが、その反対側は台座だけが残されているのです。

💡 オベリスクとは?
古代エジプトで、神殿などの入り口に立てられた「巨大な石の記念碑」。一本の岩を削り出して作った四角柱で、先端がピラミッドのような形をしています。太陽神の象徴とされ、当時の権力の証でもありました。

もともとここには、左右に2本のオベリスクが並んでいました。ではもう1本はどこへ行ったのか。答えはエジプトではなく、フランス・パリにあります。
19世紀、エジプト総督のムハンマド・アリー・パシャがフランスへ贈呈し、現在そのオベリスクはコンコルド広場に立っています。パリに設置されたのは1836年とされています。
つまり、今この台座の前に立っている私が見上げている「片割れ」は、いまパリの真ん中に立っている。そう思うと、なかなか壮大な話です。
💡 ちょっとした裏話
このオベリスクのお返しとして、フランスからエジプトに贈られたのが、カイロのムハンマド・アリー・モスクにある時計塔——という話が有名です。しかもこの時計、設置時の不具合などもあって十分に機能しなかったとも言われています。壮大なオベリスクと引き換えに動かない時計……なんとも複雑な交換です。
ただし、この「交換」が正式な取引だったのかについては諸説あります。有名な逸話として楽しむくらいがちょうどいいのかもしれません。
ラムセス2世の巨大像
神殿入口で観光客を迎えるのは、「自分大好きファラオ」とも呼ばれるラムセス2世の巨大像。もともとは第1塔門の前に6体並んでいたとされ、現在残っているのは座像2体と立像1体と説明されることが多いです(座像・立像の内訳は資料によって記述が分かれています)。それでも十分すぎるほど圧倒的なスケールで、古代エジプトの世界へ一気に引き込まれます。

ツタンカーメンの足跡を探せ|名前の「上書き合戦」
神殿の奥へ進むと、巨大な柱が並ぶ壮大な空間「大列柱廊」が現れます。ここはツタンカーメンの時代に装飾が進められた場所で、壁には若き王の治世を伝えるレリーフが残っています。


ただし注意点がひとつ。ここに刻まれた王名枠(カルトゥーシュ)、ツタンカーメンの名前は後の王に消されて書き換えられています。
やったのはホルエムヘブ。ツタンカーメンとその次のアイの名前を削り取り、自分の名前を彫り直した——とされています。しかも消し方が雑だったようで、現在も下からツタンカーメンの文字の痕跡が透けて見える箇所があるそうです。
そして話はこれで終わりません。ルクソール神殿では、「上書きの上書き」が起きています。
🗿 ルクソール神殿で起きた「名前の上書き合戦」
| 場所 | 誰が誰を上書きしたか |
|---|---|
| 大列柱廊の壁面 | ツタンカーメン/アイ → ホルエムヘブが書き換え |
| 列柱廊入口の像 | ツタンカーメン像 → ラムセス2世の名前に |
| ラムセス2世の中庭 | アメンホテプ3世の像 → ラムセス2世が流用 |
つまりこの神殿、「自分大好きファラオ」が何人もいたということ。名前を消されたツタンカーメンの上にホルエムヘブが乗り、そのホルエムヘブの像がさらにラムセス2世に持っていかれる。3,000年前の上書き保存合戦です(笑)。
残念ながら私はこの事実を後から知ったため、じっくり探す間もなく通り過ぎてしまいました。
これから行く方は、大列柱廊に入ったら壁のカルトゥーシュを意識して眺めてみてください。知っているだけで、ただの模様に見えていたものが「上書きされた歴史」に変わります。
ルクソール神殿は「土の中」に埋まっていた
実はこの神殿、長い間地中に埋もれていた歴史があります。古代エジプト文明が衰退したあと、砂やゴミが何世紀にもわたり積み重なり、神殿の大部分が埋没してしまったとされています。その上には人々が家を建て、さらにはモスクまで建てられてしまいます。

1884年、フランスのエジプト学者ガストン・マスペロのもとで本格的な発掘・除去作業が始まり、神殿は再び姿を現しました。逆に言えば、それまでの神殿は街と堆積物にすっぽり覆われた状態だったということです。
現在でも神殿の中に「アブ・ハッジャージ・モスク(Abu Haggag Mosque)」が残っており、発掘によって神殿の地面が低くなったため、モスクだけが高い位置に浮かんでいるように見える不思議な景観になっています。まさに、歴史の層が重なった場所です。
📏 どのくらいの高低差があるのか
モスクの床面は、古代の神殿の床から約8mほど高い位置にあるとされています(資料によって8〜10mと幅があります)。空中で行き場をなくしている扉があるのも、そのためです。
「なんでモスクが空中にあるの?」ではなく、「昔はあの高さが人々の暮らす地面だったのか」と考えると、一気に見え方が変わります。

かつてカルナック神殿まで続いていた「スフィンクス参道」
ルクソール神殿のもう一つの見どころが、神殿前から伸びる「スフィンクス参道」です。この道は、約2.7kmもの距離を一直線に結び、カルナック神殿まで続いていた神聖な参道で、参道の両側にはずらりとスフィンクス像が並んでいました。
参道の整備は一度に行われたものではなく、第18王朝のアメンホテプ3世の時代に始まり、第30王朝のネクタネボ1世の時代に大きく整備されたとされています。最盛期には約1,200体のスフィンクスが並んでいたとも言われますが、体数には諸説あります。

現在は一部だけですが、発掘と整備が進み、再びその姿を見ることができるようになっています。ギザの大スフィンクスは人間の顔ですが、ルクソール神殿前の参道に並ぶのも人間の頭(ファラオの顔)を持つスフィンクスが並んでいます。一方で、カルナック神殿側にはアメン神の象徴である「牡羊の頭」をしたスフィンクスが並ぶ区間もあり、それぞれ独特の雰囲気があります。
⚠️ 参道を端から端まで歩きたい方へ
参道は「チケット1枚で全部歩ける」わけではありません。ミスル公共図書館の前あたりが区切りになっていて、その先へ進むにはもう一方の神殿のチケットが必要です。しかも16時を過ぎると先へ進めなくなります。
このあたりのルールは、前回の記事で現地看板の内容を詳しくまとめています。
▶ 【エジプト旅行㉑】ルクソール神殿は何時から?6時開場なのに入れなかった朝|アザーンと気球の絶景
神様が旅をする祭り「オペト祭」
この参道は、単なる飾りではありません。古代エジプトでは、「オペト祭」という重要な祭りの際に使われていました。カルナック神殿に祀られていた主神アメンの神像を、このスフィンクス参道を通ってルクソール神殿まで運ぶ儀式が行われていたのです。つまりこの道は、神様が通る神聖なパレードルートでした。

何千年も前、この場所には音楽や歓声が響き、人々が祭りを祝っていたのかもしれない。そう思うと、ただの遺跡の道も少し違って見えてきます。実際に両側のスフィンクス像を眺めながら歩くと、3,000年以上前の祭りの行列がこの道を進んでいった光景が、自然と頭に浮かんできました。
ちなみに私が歩いたのは神殿のすぐ近く、下の写真のお神輿みたいなものがある場所まで。カルナック神殿まで歩き通したわけではありません。参道の入口部分だけでも雰囲気は十分に味わえます。

ルクソールの路上で起きた奇跡。「運命の出会い」
9:20頃、ルクソール神殿の観光を終えて歩き出しました。次の目的地は、世界最大級の「カルナック神殿」。「Uberはどこで呼ぼうかな?」などと考えながら歩いていると、道端に停まったタクシーの運転手から声がかかります。
「日本人ですか?」
エジプトのタクシーといえば「ぼったくり」の噂が絶えません。最初はいつものように無視して歩いていたのですが……。
「ちょっと待って!私は日本が大好きなんだ。ルクソール神殿は夕方のライトアップも綺麗だよ」「私、日本の本に載っているんだ」——そんなことを言ってきます。
「何を言っているんだ? 聞き間違いかな?」と自分の英語力に自信が持てない私でしたが、不思議と彼には嫌な威圧感がありませんでした。
足を止めて話を聞いてみると、やっぱり「私は日本の本に載ったことがある」と言うのです。
最初はタクシーの営業のためのネタだろうと思い「どうせ嘘だろうな」「誰かがSNSや個人ブログに載せたのを大げさに言ってるんだろうな」と疑っていました。本の名前を聞いても、彼は「わからない」と言います。
スマホの画面に現れた「奇跡」
私はエジプトに来る前に購入していた『地球の歩き方(電子版)』をスマホで開き、彼に見せながら「こういう本に載ったの?これは日本で一番有名なガイドブックなんだよ」とカタコトの英語で説明しながら、ルクソールの紹介ページを次々と表示して見せました。彼の地元であるルクソールが日本のガイドブックで紹介されてるのを見て、少しでも喜んでくれたらいいな、くらいの気持ちだったのですが……。
あるページを開いた瞬間、彼が声を上げました。
「これ、これ、これ私だよ!」
彼もまさか自分が載っている本を私が持っているとは思っていなかったはずで、本当にびっくりしている様子でした。彼が指差した先には、確かに目の前にいる彼の姿が。

嘘だなんて疑ってごめんなさい!なんと彼は、本当に『地球の歩き方』に写真が掲載されているドライバーさんだったのです。
📖 ガイドブックは電子版が身軽です
今回のように、現地でパッと開いて見せられるのは電子版ならでは。荷物も増えません。
私が持っていったのは『E02 地球の歩き方 エジプト 2025〜2026』。2026年9月時点で、地球の歩き方の公式サイトに掲載されているエジプト版もこの号です。
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地球の歩き方に載っていた250番ドライバー
写真に写っているタクシーも今目の前にあるタクシーも同じナンバー250番。まるで有名人に偶然出会ったような気分で、思わず感動してしまいました。
その後少し話をして、次はカルナック神殿に行くと言っても、彼は強引にタクシーの営業をしてきません。さすが一流ガイドブックに載る男は違います(笑)。最終的には私の方から「往復いくらでいけますか?」と尋ね、彼に送迎してもらうことになりました。提示された金額は覚えていませんが、妥当な金額だったと思います(なんせ彼は一流なので)。
こうして、心強い相棒(?)と共に、いざカルナック神殿へと向かいます!

🗺️ 「路上でいい人に出会う」を運任せにしたくない方へ
私は運よく信頼できるドライバーさんに出会えましたが、これは完全に「たまたま」です。移動と交渉のストレスを最初から消したいなら、現地ツアーや送迎を先に押さえておくのが確実だと思います。
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ルクソール神殿の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建設時期 | 新王国時代・紀元前14世紀頃(アメンホテプ3世) |
| 入場料 | 大人500EGP/学生250EGP(2026年9月時点・公式サイトで確認) |
| 私が払った金額 | 500EGP=1,600円(2024年11月・カード明細より) |
| 支払い方法 | カード払い。私が見た窓口はカードのみでした |
| 世界遺産 | 「古代都市テーベとその墓地遺跡」として1979年登録 |
| 所要時間の目安 | 1〜2時間程度(私は約1時間) |
| 混雑 | 朝8時台はチケット売り場・場内とも混雑なし(2024年11月) |
| 営業時間・参道のルール | 前回の記事㉑で現地看板つきで詳しく解説しています |
| 公式サイト | egymonuments.com |
💳 入場料はカード払い。私が使っているエポスカードは年会費無料で海外旅行保険付きでおすすめです。
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ルクソール神殿は朝と夜、どっちがいい?
ルクソール神殿は、エジプトの遺跡としては珍しく夜まで入場できます(多くの遺跡は16〜17時に閉まります)。今回私は朝に入りましたが、前々回の⑳では夜にライトアップも見ています。せっかくなので比べておきます。
| 朝 | 夜 | |
|---|---|---|
| 混雑 | 私が行った8時台は空いていました | 時間帯によって差があります |
| 暑さ | 比較的しのぎやすい | 日差しがないので楽 |
| 見え方 | レリーフや彫刻がはっきり見える | ライトアップで幻想的な雰囲気に |
| その後の予定 | そのままカルナック神殿へ流せる | 1日の締めくくりにちょうどいい |
結論としては、時間が許すなら両方がいちばん贅沢です。ルクソールに2泊以上するなら、「1日目の夜にライトアップを眺めて、2日目の朝に中へ入る」という組み立てもできます(私が結果的にそうなりました)。
ルクソール神殿の夜の様子はこちらの記事で紹介しています。
▶ 【エジプト旅行⑳】ルクソール神殿の夜景とナイル川散歩|馬車の「ワンダーラー!」勧誘に注意
ルクソールの観光スポット・モデルコース・移動手段については、まとめ記事で詳しく解説しています。
▶ 【ルクソール観光まとめ】見どころ・モデルコース・行き方・必要日数を解説
今回訪れた場所
| スポット名 | メモ | 地図 |
|---|---|---|
| ルクソール神殿 | 入場料500EGP。朝8時過ぎに入場、滞在は約1時間でした | Googleマップで見る |
| アブ・ハッジャージ・モスク | 神殿の中にある現役のモスク。宙に浮いて見えます(神殿の敷地内) | Googleマップで見る |
| スフィンクス参道 | 全長約2.7km。私は神殿近くのお神輿みたいなものがある場所まで歩きました | Googleマップで見る |
| カルナック神殿 | 次の目的地。参道でルクソール神殿とつながっています | Googleマップで見る |
※本記事の入場料は、2026年9月にエジプト観光・考古省の公式チケットサイト(egymonuments.com)で確認した内容をもとに記載しています(旅の実体験は2024年11月)。エジプトは料金改定が頻繁なため、訪問前には公式サイトで最新情報のご確認をおすすめします。
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