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【エジプト旅行㉜】砂漠の検問所を越えて|ハマダさんの執念とアブ・シンベル神殿の感動

アブ・シンベル神殿 アスワン
アブ・シンベル神殿

※この記事は連載「不安だらけのエジプトひとり旅」の第32話です。
前回の記事は↓
【エジプト旅行㉛】フィラエ神殿(イシス神殿)|絶望から一転、ナイル川に浮かぶ女神の聖域へ

ボートのおじさんの紹介で出会った若いドライバー・ハマダさん。「4,000EGP(約12,000円)でアブ・シンベルへ連れて行く」——その言葉を信じて、私は車に乗り込みました。

【実体験】砂漠の検問所で足止め

交渉成立から、わずか数分。私はハマダさんが運転する車の後部座席に飛び乗り、アスワンの街を後にしました。

出発して10分ほど経った頃、行く手に大きな検問所が現れ、車を止められました。アブ・シンベルへ続く道はこの一本きり。この検問を避けて通る術はないようです。

車外には数名の武装した警察官たちが目を光らせていました。その中に一人、明らかに他の人たちとは違う隙のない身なりをした見た感じ40〜50代ほどの男性がいました。一目でこの場所の責任者だと分かります。

ハマダさんは車の中からその責任者と話し始めました。今からどうしても神殿へ向かいたいという状況を必死に説明しているようでしたが、責任者の表情は険しいままです。車内の私にまで、重苦しい沈黙が伝わってきます。

すると会話の中で、「ヤバーニ(Yabani)」という言葉が耳に飛び込んできました。アラビア語で「日本人」を意味する言葉です。「日本人なのか?」そんな確認をしていたのでしょうか。以前どこかで、「エジプトにおいて日本人はルールを守り、信頼できるというポジティブな印象を持たれている」という情報を見たことがありました。だからこの言葉が出たことは、交渉において有利に働くのではないか——そんな淡い期待を抱きながら、やり取りを見守りました。

ハマダさんの執念

しばらく話した後、ハマダさんは車を端に移動させました。どうやら一旦、話はついたようです。しかし彼はすぐにスマホを取り出し、「ダメだった」とポツリと言いました。それでも「警察の友達に電話する」と言って、再び誰かと話し始めます。

電話を終えると、ハマダさんは車を降り、検問所の近くにある事務所へと消えていきました。この時点で、彼が具体的に何をどう調整しているのか、私には分かりません。ただ確実に言えるのは、「ハマダさんは、私をアブ・シンベルへ連れて行くために一生懸命頑張ってくれている」という事実だけでした。

私にできることは何もありません。でも、彼のその姿を見ているうちに、「ここまで尽くしてくれたのなら、もしここを通過できずに断念することになっても仕方がない」という、清々しいほど穏やかな気持ちにすらなっていました。

執念が実った瞬間

やがて車に戻ってきたハマダさんは、「もう一度検問所にトライする」と言って、再び列に並びました。そして、先ほどの険しい顔をした責任者のもとへ。相変わらず責任者の表情は硬いままでした。しばらく話した後、ハマダさんがいくらかのお金を彼に手渡しました。

これが正当な通行料なのか、あるいは「裏の手」としての賄賂的なものなのかは分かりません。しかし、それが「通行許可」を意味したことは、ハマダさんの顔に浮かんだ笑顔ですぐに分かりました。

検問所にいたのはわずか5〜10分ほどだったと思いますが、私にはかなり長い時間のように感じられました。こうして車は、再びアブ・シンベルに向けて走り出しました。その後も何度か検問はありましたが、止められることはなく、道は驚くほどスムーズに開かれていきました。

砂漠の一本道と、ハマダさんの謎

アブ・シンベルへの道は、見渡す限り砂漠の中を貫くひたすらな一本道です。外の風景は走っても走ってもほとんど変わりませんが、その「何もない」ことの圧倒的なスケール感に、ただただ感動してしまいます。

砂漠の景色
このような景色がずっと続きます

同時に、ふと怖さもよぎります。「もしこんな場所で置いてけぼりにされたら、それは『死』と同義だな……」なんて、一人旅ならではの想像が頭をかすめました。

そんな過酷な環境でのドライブですが、やはりハマダさんもこれまでのエジプトのドライバーたちと同じでした。どれだけ外が暑かろうと、エアコンはつけずに窓を開けて爆走します。さらに不思議なことに、ハマダさんは長袖の服を着込んでいます。

一直線の砂漠道
ちなみにこの上着の下も長袖でした ( ゚Д゚)

「それ、絶対に暑いよね……?」

喉元まで出かかったツッコミを飲み込みながら、私は砂漠の風を浴びていました。エジプトの人にとって、11月の気候でエアコンをつけるなんてあり得ないことなのでしょうか。

ハマダさんがかなり飛ばしてくれたおかげか(たぶん平均スピード100km/hくらい)、車は予定よりもずっと早くアブ・シンベルの街へと滑り込みました。ずっと砂漠の道を走り続けるので景色があまり変わらず長く感じましたが、アスワンを出発してからかかった時間は約3時間。4時間くらいかかると思ってたので早くついてよかったです。

アブシンベルへと向かう車内
スピードメーターの針はちょうど100km/hくらいかな? ひたすら直線の道だから大丈夫かな?

【感動】待ちわびた、アブ・シンベル上陸

アブ・シンベル神殿は、アスワンから約280km南、スーダン国境にほど近い場所に位置しています。これだけの距離を、砂漠の一本道をひた走ってたどり着いたのだと思うと、感慨もひとしおです。

車を降りると、そこにはアスワン以上に突き抜けるような青空と、強烈な太陽が待っていました。ハマダさんと「ここで待ってるから」「わかった」と約束を交わし、私は神殿の入り口へと向かいます。

チケット売り場で入場券を購入。価格は765EGP(後日カード明細で確認・約2,471円)※2024年11月時点でした。決して安くはない金額ですが、ここまで必死な思いでたどり着いた私に、入場しないなんてありえません。

🎟️ アブ・シンベル神殿の入場料(2026年7月時点の目安)
私が訪れた2024年11月は765EGPでしたが、公式予約ポータルでは822EGPと記載されてます。エジプトの入場料は改定が多いので、訪問前に公式サイトで最新価格を確認することをおすすめします。
公式サイト:Egymonuments(公式チケット予約ポータル)

💡 アスワン発のアブシンベルツアーを事前予約するなら
私のように当日手配しようとすると、時間・費用ともに大きなロスになります。ツアーで確実に訪れたい方は、出発前に予約しておくのが断然おすすめです。
アスワン発アブシンベルツアーを探す(VELTRA/日本語完結で安心)
アスワン発アブシンベルツアーを探す(Klook)
アスワン発アブシンベルツアーを探す(GetYourGuide)
アスワン発アブシンベルツアーを探す(Trip.com)

アブシンベル神殿入場料金表
他の遺跡より少しお高め

💡 アブ・シンベル神殿の基本情報(2026年7月時点)
営業時間:毎日 6:00〜16:00
支払い:クレジットカード対応。料金表や窓口にVISA・Mastercardのマークがあり、私はVISAで支払いました
スマホでの撮影は無料:料金表に「携帯電話での撮影は無料」と明記されています
6歳未満は無料

📍 場所はこちら:アブ・シンベル神殿(Google マップ)

ナセル湖
ナセル湖

緩やかな坂道を下っていくと、左手には巨大な人造湖「ナセル湖」が青く輝いていました。その先に回り込んだ瞬間——

「……本当に、来れたんだ。」

アブシンベル神殿
巨大なラムセス2世の像が見えた時は感動しました

目の前に、あのラムセス2世の巨大な4体の像が姿を現しました。思わずその場に立ち尽くしました。数時間前、アスワンの宿で絶望し、一度は完全に諦めた景色が、今目の前にあります。ハマダさんの執念、そして「ここで諦めたら一生後悔する」とアブシンベル行きを決断した自分——すべてが繋がって、この圧倒的な光景にたどり着いたのだと思うと、震えるような感動が込み上げてきました。

知っておきたい「世界遺産」のはじまり

「ここまで巨大な神殿を、いったいどうやって移設したんだろう——」。目の前の圧倒的な存在感を前に、ふとそんな疑問が頭をよぎりました。

アブシンベル神殿のラムセス2世
写真の人の大きさからラムセス2世の像がいかに大きいかわかりますでしょうか?
アブシンベル神殿内部
エジプトの本などでよく見る光景
アブシンベル神殿内部
壁画もきれいでした

💡 世界遺産誕生のきっかけは、このアブ・シンベル神殿だった

1960年代、エジプトでナイル川の氾濫を防ぐためにアスワン・ハイ・ダムの建設が計画されました。しかし、ダムができるとこの巨大な神殿は完全にナイル川の底に沈んでしまうことが判明。これに危機感を抱いたユネスコが「一国の遺産を人類共通の宝として世界で守ろう」と呼びかけ、約60カ国から資金と技術が集結しました。そして神殿は約1,000〜1,036個のブロックに解体され、元の場所より約60m高い現在地へパズルのように積み直されたのです。この国際的な救済活動は、後の1972年「世界遺産条約」の制定につながる大きなきっかけとなりました。

この青く美しいナセル湖を眺めると、どこか切ない気持ちになります。この湖の底には、かつて数千年の時を刻んでいた神殿の「本来の場所」が今も沈んでいるのです。この巨大な神殿が、実は一度バラバラに解体されて運ばれたものだなんて、目の前にある圧倒的な存在感を前にすると、にわかには信じられません。

ナセル湖
ナセル湖

現代の技術でも届かなかった「1日」

この移設作業がいかに精密だったかを物語る、面白いエピソードがあります。

アブ・シンベル神殿の最深部には、「至聖所(しせいじょ)」と呼ばれる最も神聖な小部屋があります。そこには、闇を司るプタハ神、アメン・ラー神、神格化されたラムセス2世、そしてラー・ホルアクティ神の4体の像が静かに並んでいます。

アブ・シンベル大神殿の最深部にある至聖所(しせいじょ)
アブ・シンベル大神殿の最深部にある至聖所(しせいじょ)

この場所では、年に2回、日の出の光が入り口から60メートルもの距離を貫いて最深部まで差し込み、神々の像を真っ直ぐに照らし出す「太陽の奇跡」という神秘的な現象が起こります。その日は2月22日と10月22日——ラムセス2世の生誕日と即位の日とされている日です(諸説あります)。なお、プタハ神だけはあえて光が当たらない設計になっており、3,000年前の天文学と建築学の精度の高さを感じさせます。

💡 「太陽の奇跡」の日は大混雑
この現象が見られる2月22日・10月22日は「太陽祭」として、世界中から観光客が押し寄せるそうです。この瞬間を狙うなら夜明け前からの場所取りが必要とされていますが、逆にこの2日を避ければ、比較的ゆっくり見学できます。ちなみに私が訪れたのは11月だったので、神殿はとても落ち着いて見られました。

移設の際、当時の世界最高の科学技術を駆使して、この現象も完全に再現しようと試みられました。しかし、計算にわずかな差が生じたのか、光が至聖所を照らす日は古代の時代よりも「約1日」ズレてしまったと言われています。

3,000年前の人々が残した天文学と建築技術の精度——そのロマンを、移設後の神殿は今も静かに伝えています。

王の愛が刻まれた「小神殿」

大神殿のすぐ隣には、ラムセス2世が最愛の王妃ネフェルタリのために建てた「小神殿」があります。大神殿の巨像に比べれば小ぶりですが、入り口に並ぶ6体の立像は圧巻の迫力です。

ネフェルタリの小神殿
ネフェルタリの小神殿

神殿の奥へ足を踏み入れると、そこは外の灼熱が嘘のような、ひんやりとした静寂に包まれていました。

ネフェルタリの小神殿内部
ネフェルタリの小神殿の内部

左右に並び立つ柱の頭部には、愛と美の女神ハトホルの顔が彫り込まれており、その優しい眼差しが私たちを見守っているようです。壁面を埋め尽くす緻密なレリーフには、ラムセス2世が愛した王妃ネフェルタリが、女神から祝福を受ける様子が色鮮やかに描かれています。

ネフェルタリの小神殿の壁画
ネフェルタリの小神殿の壁画

数千年の時を経てもなお失われないその繊細な美しさは、ラムセス2世のネフェルタリに対する深い愛の強さを、静かに、けれど雄弁に語りかけてくるようでした。

大神殿と小神殿をあわせて、私の滞在時間は約1時間ほどでした。じっくり写真を撮ったり余韻に浸ったりしたい方は、もう少し余裕をみておくと安心かもしれません。アブ・シンベルへの行き方・料金・ツアーの選び方など、より詳しい情報はこちらのまとめ記事にもまとめています。
アブシンベル神殿の行き方まとめ|ツアー・料金・注意点【アスワン発】

【実体験】人生で一番高くて、一番美味しかったアイス

そういえば、早朝からのハプニングに必死で、今日一日、何一つ口にしていなかったことに気づきます。フラフラと神殿の敷地内にある売店に吸い寄せられ、目に入ったアイスを手に取りました。

砂漠の中のアイス
砂漠でアイスが食べれること自体すごいことですよね

会計で提示された金額は、なんと235EGP(約762円)

「高っ……!!」

私の人生史上1番高いアイスです。普段の私なら間違いなく躊躇するレベルですが、その時の私には迷う余裕もありませんでした。しかし、一口食べてみると——

「……めちゃくちゃ美味しい……!!」

冷たさが体中に染み渡り、糖分が空っぽの体にダイレクトにチャージされていく感じがしました。観光地価格なのは間違いありませんが、間違いなく、今回の旅で記憶に残るアイスでした。

ストロベリーのアイス
ストロベリー味を選びました

旅の終わりと、最高の財産

充実感に満ちた足取りで、私はハマダさんが待つ駐車場へと向かいました。

帰り道、ハマダさんに支払う現金が手元になかったため、アブ・シンベルの街にあるATMに寄ってもらいました。ここで、エポスカードを使い海外キャッシングを利用しました。
1回の引き出し上限である3,000EGPを2回、計6,000EGP(約19,070円)を引き出しました。
エポスカードは「エポスNet」アプリに利用明細が反映され次第、すぐにスマホから繰り上げ返済ができるため、利息を最小限に抑えられます。海外旅行における心強い味方です。

海外キャッシングやクレジットカード選びについて詳しくはこちら↓
海外旅行のクレジットカードはこの2枚でOK|エポスカード×楽天プレミアムカード実体験レビュー

この日の出費金額
ハマダさんのタクシー代4,000EGP(約12,000円)
入場料765EGP(約2,471円)
アイスクリーム235EGP(約762円)
合計5,000EGP(約15,233円)

1日の出費としてはなかなかの金額になりましたが、この選択に1ミリの後悔もありません。
ちなみに、今回の15日間にわたるエジプト旅行での旅費全体の詳しい内訳はエジプト旅行費用まとめ記事で公開しています。

ちなみに、行きはあれほど緊張した検問所も、帰り道は一度も止められることなく、驚くほどスムーズでした。再び砂漠の一本道を走りながら、私はぼんやりと考えていました。もし今朝のトラブルが起きていなければ、私はこれほどまでにこの場所に感謝し、一分一秒を噛み締めて神殿を眺めただろうか。今回は運が良かった。ボートのおじさんやハマダさんの存在、タイミングのすべてが重なって、最高の一日になりました。

砂漠の熱風と、アイスの甘み。そしてラムセス2世の圧倒的な姿。この日の経験は、私の人生において一生モノの財産になりました。さらば、アブ・シンベル。

アブシンベル神殿
アブ・シンベルは11月でもかなり暑かった。帽子や日傘は持ってた方がいいかも。エジプト旅行の持ち物は→エジプト旅行の持ち物ガイド

※本記事の入場料等の情報は、記事執筆時点(2026年7月)で確認できる最新の公式情報をもとに記載しています。エジプトは料金改定が頻繁なため、訪問前には公式サイトでの再確認をおすすめします。

今回訪れた場所一覧

スポット名場所
アブ・シンベル神殿(大神殿・小神殿)Googleマップで見る

次の記事はこちら↓
【エジプト旅行㉝】アスワン最後の夜とギザへ|ハマダさんとのお別れ、そしてピラミッドとの対面

アスワン・アブシンベルのまとめ記事はこちらの記事で紹介してます。
【アスワン観光まとめ】アブシンベルの行き方・フィラエ神殿・宿選び・移動手段を解説

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