※この記事は連載「不安だらけのエジプトひとり旅」の第⑳話です。初めての方はエジプトひとり旅15日間の全記録から読むと流れがわかりやすいです。
前回の記事:【エジプト旅行⑲】ルクソール西岸半日ツアー体験記|王家の谷・ハトシェプスト神殿・メムノンの巨像を巡る
西岸ツアーを終え、ホテルで一息ついたものの、じっとしているのはもったいない。せっかくのルクソール2日目の夜、昨日とはまた違う景色を求めて街へ繰り出しました。

闇に浮かび上がる3,000年の威容
今夜の目的地は、ルクソール神殿周辺です。拠点にしている「Queens Valley Hotel」を出て、昨日のスーク(市場)の迷宮とは異なるルートで、神殿を外側からぐるりと一周するように歩いてナイル川沿いを目指します。

夜の闇の中に白く浮かび上がるルクソール神殿は、遠くから眺めるのとは別次元の圧倒的な存在感でした。ライトアップされた巨大な列柱や塔門が、夜の空気の中にくっきりとした輪郭を刻んでいます。3,000年以上もの時を経た建造物が放つ、時空を超えたエネルギーに思わず足が止まります。

ルクソール神殿は夜間も開館しており、柵越しに中を覗くと、ライトアップされた遺跡の間を歩くたくさんの観光客の姿が見えました。夜の遺跡探検を楽しんでいる人々の声が遠くに聞こえ、どこかお祭りのような活気が神殿内に満ちているのが伝わってきます。
🌙 ルクソール神殿|基本情報
項目 内容 建造者 アメンホテプ3世・ラムセス2世など(数百年かけて建設) 世界遺産 「古代都市テーベとその墓地遺跡」として登録 夜間観光 可。日没後にライトアップされ幻想的な雰囲気に スフィンクス参道 カルナック神殿まで約2.7km。2021年11月に大規模な整備を経て一般公開され観光の目玉に オベリスク かつて正面に2本あったが、1本はエジプト総督ムハンマド・アリーによってフランスへ寄贈され、現在はパリのコンコルド広場に立つ(もう1本は今もルクソール神殿前に現存) ※営業時間は変更される場合があります。最新情報はエジプト観光・考古学省の公式サイトでご確認ください。
パリにある「ルクソールのオベリスク」と、その返礼の話
ルクソール神殿の正面には、もともと2本のオベリスク(先のとがった石柱)が立っていました。そのうち1本は、19世紀にエジプト総督ムハンマド・アリーによってフランスへ寄贈され、1836年からパリ・コンコルド広場の中心に立っています。パリで一番古いモニュメントとも言われ、今やパリの象徴のひとつです。
そして面白いのが、その「返礼」の話。オベリスクを受け取ったフランスは、お礼として大きな機械式の時計をエジプトに贈りました。その時計は、今もカイロのムハンマド・アリー・モスクの中庭にある時計塔にはめ込まれています。ただ、この時計、設置時の不具合などもあって十分に機能しなかったことで知られています。なんとも残念なオチつきの逸話ですが(笑)、エジプトとフランスをつなぐ、ちょっとした歴史の小ネタです。
🏺 スフィンクス参道とオペト祭
ルクソール神殿とカルナック神殿を結ぶ約2.7kmの「スフィンクス参道」は、年に一度の「オペト祭」で、アメン神の聖なる船がカルナックからルクソール神殿へと運ばれた、神々の通り道だったとされています。長く砂に埋もれていましたが、2021年11月に大規模な整備を経て一般公開され、両側に並ぶスフィンクス像が往時の姿を取り戻しました。
ふとナイル川に目を向けると、停泊するクルーズ船が放つイルミネーションが、静かな川面にゆらゆらと反射していました。古代の遺跡と現代の光が交差する、なんとも幻想的な光景です。
🌙 ルクソール神殿をガイド付きで夜間観光するなら
私は外から眺めるだけでしたが、ライトアップされた夜のルクソール神殿の雰囲気を味わえる現地ツアーも多数あります。専門ガイドの解説付きで歩けば、昼間とはまた違う体験ができます。
→ ルクソールのツアーを探してみる(GetYourGuide)
→ ルクソールのアクティビティを探す(Trip.com)
→ルクソール現地ツアーを見てみる(VELTRA)

執拗な呪文「ワンダーラー!」との攻防戦
のんびりと夜風を楽しんでいると、背後からカポカポという蹄(ひづめ)の音が近づいてきました。
「ワンダーラー!ワンダーラー!(One dollar!)」
馬車のおじさんです。「1ドルで乗せてあげるよ」というお決まりの勧誘。最初は「No, thank you!」と笑顔でかわしましたが、彼は諦めません。私の歩くペースに合わせて、馬車がじりじりと横をついてきます。
「ワンダーラー」「ワンダーラー」「ワンダーラー」……。
断っても断っても終わらない会話のループ。最終的に私が選んだ戦略は「完全無視」でした。前だけを見てひたすら歩き続けると、ようやく馬車は別のお客さんを探しに去っていきました。エジプトの勧誘に対しては、申し訳なく思わず、時には「無」になるのも立派な防衛術だと実感した瞬間です。

⚠️ 注意!謎の独自通貨「ワンダーラー」の正体
ここで、ルクソールを歩く皆さんにひとつお伝えしたいことがあります。
馬車の勧誘で飛び交うこの「ワンダーラー」。直訳すれば「1ドル」ですが、必ずしも「本当に1ドルで乗れる」という意味ではないようです(笑)。「1ドル」という言葉の響きで安さを印象づけているケースが多く、実際には乗車後に「チップは別だ」「距離が長かったから追加料金だ」と金額が膨らんでいくケースもあるようです。
いわば馬車のおじさんたちの世界だけで通用する独自通貨「ワンダーラー」。最初の言い値と最終的な着地点が異なるトラブルもルクソールでは起きているそうなので、要注意です。
ちなみに、ルクソールの馬車(カレッシュ)は時間制で利用するのが一般的なようで、観光客向けに30分〜1時間単位で交渉するケースが多いとされています。「1ドル」で乗れることはまずないと考えておいた方が安全です。
💡 もし馬車に乗る場合は、【金額・通貨・チップの有無】を乗る前に必ず明確にしておくのが鉄則。交渉が面倒だと感じたら、「断る→無視する」の二段構えで対応するのが、精神的にも一番楽な正解ルートです(笑)。
エジプト全体の勧誘・治安事情については、こちらの記事でまとめています。
▶ エジプトの治安は危険?一人旅で感じたリアルと注意点まとめ
ルクソールの輪郭を掴んだ帰り道
神殿を一周し、ナイル川沿いを歩いたあと、ホテルの北側から戻るルートで歩いたことで、ルクソールの街の輪郭が少しずつ自分の中に馴染んできた気がします。

美しくライトアップされた神殿、ナイル川に揺れる光、そしてしつこくついてくる馬車のおじさん……。そのすべてが混ざり合って、今のルクソールの夜を作っている。そんなことを考えながら、充実した2日目の夜を締めくくりました。
明日はツアーではなく、個人でルクソール神殿とカルナック神殿を観光します。夜の幻想的な神殿を見た翌朝、今度は開館直後の静かな空気の中で同じ遺跡と向き合うのはどんな体験なのか——ルクソールの朝は、また別の表情を見せてくれるはずです。
ルクソール神殿・カルナック神殿の見どころや回り方はこちらでまとめています。
▶ 【ルクソール観光まとめ】見どころ・モデルコース・行き方・必要日数を解説


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