※この記事は連載「不安だらけのエジプトひとり旅」の第29話です。
前回の記事は↓
【エジプト旅行㉘】ナイル川を望む絶景と二重構造の不思議|コム・オンボ神殿
ルクソールからチャーター車に揺られること約8時間。エドフとコム・オンボ、二つの遺跡を巡る充実した時間のあと、ようやく目的地のアスワンに到着しました。時刻は16時。しかし、ここから一気に「観光地」ではない空気になっていきます。
宿選びで迷った2つの選択肢
アスワンの宿を予約する際、最後まで2つの選択肢で迷っていました。
| 案A:市街地エリア | 案B:郊外エリア(今回選択) | |
|---|---|---|
| 立地 | アスワン駅に近い | 市街地から少し離れる |
| 利便性 | スーク・飲食店・タクシーが徒歩圏内 | 歩いて行ける店がほとんどない |
| 環境 | 街の賑わいがある | ナイル川の景色・静かな星空 |
今回アスワンに来た最大の目的は、翌日訪れるアブシンベル神殿です。どうせ翌朝4時出発なら、市街地じゃなくてもいいかなと思い、最終的に郊外の宿を選びました。予約したのは「Endo Mando」というゲストハウスです。
Endo Mandoがあるのは、アスワン中心市街地から南へ車で約15〜20分、ナイル川東岸のシャッラール(Ash Shallāl)と呼ばれる地区です。旧アスワン・ダム(アスワン・ロウ・ダム)に近いエリアで、予約サイトの住所表記もこの地区名になっています。アスワン駅周辺の喧騒からは確実に離れた、文字通りの「郊外」です。
📍 場所はこちら:Endo Mando(Googleマップ)
「ホテル」ではなく「ゲストハウス」での洗礼
到着してまず驚いたのが、宿の場所の分かりにくさです。ベテランのドライバーさんですら道を迷うほどの細い路地の先。最終的には車が入れない場所だったので降りて、徒歩で向かいました。

入り口の壁に大きく書かれていたのは「GUEST HOUSE」の文字。ホテルだと思って予約したのですが、そこは非常にアットホームなゲストハウスでした。フロントらしき場所はなく、近くにいた人に尋ねると、どこからかオーナーらしき男性を連れてきてくれました。

宿泊客はどうやら私一人のようです。周りを見渡しても観光客の姿はなく、聞こえてくるのは地元の人たちの生活音だけ。一気に観光地感が薄れ、「現地の生活圏」に入った感覚がありました。
ヌビア文化が彩るカラフルな建物
建物は、目が覚めるほど鮮やかなパステルカラーに彩られていました。特に青が印象的で、ところどころにピンクや黄色の装飾が混じり、砂漠の景色の中にあって夢のように映えます。

これはヌビア文化に由来するスタイルです。Endo Mandoはアスワン東岸の郊外に位置するゲストハウスですが、建物のデザインはヌビアの伝統的なスタイルを取り入れた造りになっています。
💡 ヌビア人とは?
ヌビア人は、現在のエジプト南部からスーダン北部にかけて暮らしてきた人々で、独自の言語や文化を持つ民族集団です。1960年に着工し1970年に完成したアスワン・ハイ・ダムによって、ナイル川上流域の広い地域が水没することになり、多くの人が故郷を離れました。研究資料では、エジプト側では約5万人(資料によっては約7万人とも)が、アスワンの北約50kmのコム・オンボ周辺に造られた新しい村へ移住したとされ、スーダン側の移住者を含めると10万人を超えるとする資料もあります。現在もアスワン周辺には、移住後に受け継がれてきたヌビアの文化を感じられる村や集落が残っています。
砂漠の景色の中に現れるこのカラフルな街並みは、アスワンならではの光景でした。
ちなみに、アスワン周辺にはヌビア文化を感じられる村がいくつかあります。観光地として一番有名なのがナイル川西岸のガルブ・スヘイル(Gharb Soheil)で、「ヌビアン・ビレッジ(通称:青の村)」と呼ばれているのはたいていこの村のことです。
また、市街地のすぐ目の前に浮かぶエレファンティネ島にも、シウ村・コティ村といったヌビアの人々が暮らす集落があり、こちらはコルニーシュから公共フェリーで渡れます。
料金は、2026年時点の旅行情報ではボートが往復300〜500EGP程度、陸路のタクシーが片道100〜200EGP程度、エレファンティネ島への公共フェリーが5EGP程度という目安が見られます。ただしボートは人数・船の種類・待機時間・交渉次第で大きく変わりますし、フェリー代も改定される可能性があるので、あくまで参考程度に考えて、現地で確認してください。
私はEndo Mandoで雰囲気を満喫していたので青の村観光には行きませんでしたが、ヌビア文化に興味がある方はぜひ。
シンプルな客室
私が泊まった部屋も、まさに「手作り」といった温かみのある内装でした。料金は2泊3日で9,264円。エジプトの宿泊費としては決して安くありません。エジプト旅行全体の費用感については、こちらの記事でまとめています。
→ 【エジプト旅行費用まとめ】15日間ひとり旅の総額30万円のリアルな内訳を全公開

設備は最小限で、アメニティなし、シャワーを浴びるとトイレまで濡れる、エジプトではよくあるタイプのバスルームでした。とはいえ、こうした不便さもまた旅のリアリティ。贅沢な設備を求めてここに来たわけじゃないので、それはそれで構いませんでした。

同じゲストハウスに泊まりたい方は、こちらから予約できます。
▶ Endo Mandoをチェックする(Agoda)
ベランダからの絶景
ベランダに出た瞬間、目の前に広がるのは、ナイル川の穏やかな流れ。無数のボートが係留され、ちょうど夕日が沈む時間帯で空がオレンジ色に染まっていました。

「これは、想像以上だ」
この絶景を独り占めできる贅沢。ナイル川を眺めながらぼんやりしていると、長い移動の疲れもすっと抜けていくようでした。こういう何もしない時間こそ、旅の中では意外と一番贅沢なのかもしれません。
——このときはまだ、このあと待っている「不便さ」のことを何も知りませんでした。

アスワンの他のホテルも探したい方はこちらから。
▶ アスワンのホテルを探す(Trip.com)
配車アプリが使えない誤算
夕日を眺めたあと、近所を散策してみました。しかし驚くほど「何もない」ことに気づきます。市街地へ行こうとUberを起動しますが、まったくマッチングしません。中東でよく使われるCareemも試しましたが、こちらも全滅。
予約時はUberタクシーなどで簡単に市街地まで行けると思ってましたが誤算でした。
カイロ以外では配車アプリが使いにくいという話は聞いていましたが、ここまでとは思いませんでした。結局、市街地へ行くことは諦め、初日は部屋でゆっくり過ごすことにしました。
ひとつ補足しておくと、これは「アスワンでは配車アプリが一切使えない」という意味ではありません。あくまで、私が泊まった東岸南部の郊外で、その日その時間に一度もマッチングしなかったという体験です。
この記事を更新している2026年9月時点で調べてみると、Uberの公式サイトのエジプト対応都市一覧にアスワンは掲載されていません。一方Careemには、アスワン向けのドライバー登録ページが用意されていて、サービスとしては存在しているようです。
つまり「サービスが存在すること」と「自分がいる場所で実際に車が捕まること」は別ということ。とくに郊外では、配車アプリが確実に使える前提で宿を選ばない方が安全だと思います。
💡 宿予約のコツ:今回の体験から強くおすすめしたいのが、予約前にGoogleマップで宿の正確な位置を確認することです。「車で15〜20分」と聞くと近そうに感じますが、配車アプリが機能しない地域だと、その15〜20分が一気に高いハードルになります。アスワンに限らず、海外で宿を予約する時は「市街地から徒歩で何分か」「駅やバス停から近いか」「タクシーがすぐ捕まる場所か」までセットで確認するのが安心です。
⚠️ アスワンで配車アプリを使う予定の方へ:私が宿泊した東岸南部の郊外では、UberもCareemも一度もマッチングしませんでした。アスワン全域で使えないという意味ではありませんが、少なくとも郊外では当てにしない方が安全です。宿によっては、スタッフやオーナーにタクシーを手配してもらえる場合もあるようなので、予約時や到着時に「市街地までどうやって行けばいいか」を確認しておくと安心です(私は結局、頼めるタイミングがありませんでした)。
アスワンへのアクセスや市内の移動手段全般については、こちらの記事も参考にどうぞ。
→ アスワン行き方まとめ|カイロ・ルクソールからのアクセス(飛行機・鉄道・バス比較)
エジプト旅行で使えるアプリの詳細はこちらもどうぞ。
→ エジプト旅行で使ってよかったアプリまとめ
なお、私はエジプトではahamoを使っていましたが、月30GBまで追加料金なしで使えるので、アスワンでも問題なく繋がりました。とはいえこれは「もともと普段使っていた回線をそのまま持って行った」というだけの話で、eSIMやレンタルWiFiという選択肢もあります。海外通信手段の比較はこちらも参考にどうぞ。
→ 海外旅行の通信手段5つを比較|格安SIMユーザーが損しない選び方
郊外の宿に泊まるなら、準備しておきたい5つのこと
今回の私のように「景色重視で郊外の宿を選ぶ」という方に向けて、実際に泊まってみて「これは先にやっておくべきだった」と感じたことをまとめておきます。
- 水と軽食は市街地で買っておく……私が滞在した2024年11月時点では、徒歩で気軽に食事ができる場所を見つけられませんでした。到着前、車で移動している間に買っておくのがベストです
- 夕食をどうするか、チェックイン時に確認する……宿で食事を出してもらえるのか、出してもらえないなら周辺に選択肢があるのか。私はここを確認しておらず、判断材料がないまま夜を迎えました
- Googleマップのオフライン地図をダウンロードしておく……路地が細く、電波が不安定な場所でも道が分かるようにしておくと安心です
- 少額紙幣を用意しておく……郊外ではカードが使える店がほぼありません。チップや小さな買い物用に、細かいエジプトポンドがあると動きやすくなります
- 「市街地へ出る手段」を到着時に聞いておく……配車アプリが使えない前提で、どうやって街に出るのかを先に把握しておくと、行動の自由度がまったく違ってきます
現金の準備については、私はエジプトではエポスカードの海外キャッシングを使っていました。詳しくはこちらにまとめています。
→ エポスカード海外キャッシング完全ガイド|ATMの使い方・現地通貨の選び方・繰り上げ返済まで解説
Endo Mandoに泊まってみて:良かった点・気になった点
実際に泊まってみての、正直な感想をまとめておきます。
😊 良かった点
- ベランダから望むナイル川の景色は文句なしの絶景。夕焼けも夜景も最高でした
- 夜は街灯も少なく、星空も綺麗に見える静けさ
- ヌビア風のカラフルな建物デザインがフォトジェニック
- 市街地とは違ったエジプトの雰囲気をそのまま味わえる現地の生活圏
😅 気になった点
- 市街地から離れているため、観光・買い物・食事はかなり不便
- Uber・Careemが一度もマッチングせず、移動手段が大きく制限された
- 市街地のように、歩いて気軽に入れる店が並んでいる環境ではない
- 夜にアスワン市街地を散歩したい、外で食事したい、という気軽な行動が取りにくい
アスワンの宿選び、結論として
景色は本当に素晴らしかった。それは間違いありません。
そのうえで正直に言うと、もし知り合いに「アスワンってどこに泊まればいい?」と聞かれたら、私は市街地エリアをおすすめすると思います。
Endo Mando自体は素敵な宿で、ナイル川の景色や夜景は本当に絶景でした。けれど、市街地から離れている分、移動の自由度がぐっと下がり、配車アプリも使えないとなると、観光や食事の選択肢がかなり制限されてしまいます。「景色は最高だけど、便利さとは正反対」というのが正直なところです。
アスワンの宿エリア早見表
アスワンで宿を探すとき、大きく4つのエリアが候補になります。
| エリア | 特徴 | こんな人に |
|---|---|---|
| 市街地(アスワン駅・スーク周辺) | 飲食店・買い物・タクシーが徒歩圏。選択肢が多い | 初エジプト/観光も食事も自由に動きたい人 |
| ナイル川東岸の郊外 (今回泊まったエリア) | 絶景と静けさ。ただし周辺に店がない | 宿でのんびりしたい/景色を最優先したい人 |
| エレファンティネ島 | 島の中にヌビアの村。市街地へは公共フェリー(5EGP程度) | 街の近さと静けさを両立したい人 |
| 西岸のヌビア村 (ガルブ・スヘイル周辺) | カラフルな村の中に宿が点在。移動はボートか陸路タクシー | ヌビア文化にどっぷり浸かりたい人 |
※エレファンティネ島と西岸エリアには私は泊まっていないため、こちらは調べた範囲での情報です。
郊外の宿が向いている人・市街地が向いている人
「郊外は失敗」と言い切るつもりはありません。何を優先するかで、正解はまるっきり変わります。
🏞️ 郊外エリアが向いている人
- ナイル川の景色と静けさを最優先したい
- 夜は宿でゆっくり過ごす予定
- 移動はツアーの送迎や事前手配のタクシーで済ませられる
- 宿のスタッフに移動を相談できる(英語や身振りに抵抗がない)
🏙️ 市街地エリアが向いている人
- 夜にスークや街を歩いてみたい
- 食事の選択肢を自分で選びたい
- 徒歩とタクシーで自由に動きたい
- 初めてのエジプトで、移動に不安がある
私は完全に後者のタイプでした。だからこそ、同じタイプの人には市街地をおすすめします。
景色は最高でしたが、利便性とのトレードオフは大きい。これがアスワンに2泊してみた私の正直な結論です。
📍 市街地エリアの目印:アスワン駅(Googleマップ)
明朝4時、迎えは来るのか?
今回アスワンに来た最大の目的は、世界遺産アブシンベル神殿を訪れることです。アスワンからアブシンベルまでは約280km、車で片道3〜4時間ほどかかります。砂漠のど真ん中を突っ走る長距離移動のため、ツアーの出発は朝4時前後が一般的で、神殿には朝の早い時間帯に到着するスケジュールが組まれています。

アブシンベル神殿へのツアーはこちらから探せます。ホテルまでの送迎が付くタイプが一般的です。
▶ アスワン発アブシンベル日帰りツアーを見てみる(GetYourGuide/ホテル送迎付き)
ツアー予約サイトの選び方については、こちらの記事でタイプ別にまとめています。
→ 海外旅行の現地ツアー予約サイトおすすめ比較|英語が苦手な初心者向けにタイプ別で解説
アブシンベルツアーは往復だけでも6〜8時間近い長距離移動になります。砂漠の一本道では電波が不安定になることもあるので、音楽やオフライン地図は、宿のWi-Fiがあるうちにダウンロードしておくと安心です。
翌朝4時に、Agodaで予約した送迎車が来る予定。しかし、この街外れのゲストハウスまで、本当に迎えに来てくれるのでしょうか。
迎えに来てくれるはずの業者にメールを送っても返信はなく、WhatsAppの連絡先もありません。「これまでもちゃんと来てくれたし、大丈夫だろう」——そう自分に言い聞かせながら、ナイル川の静寂の中で眠りにつきました。ナイル川の静かな夜景とは裏腹に、不安だけはなかなか消えませんでした。
果たして、私は無事にアブシンベルへ向かうことができるのでしょうか……。
💡 WhatsApp(ワッツアップ)とは?
世界的にシェアの高い、日本でいう「LINE」のようなメッセージアプリです。エジプトでは、ホテルやツアー会社との連絡にWhatsAppが使われることが多いため、旅行前にインストールしておくと便利です。現地で予約や送迎の確認をする場面が意外と多く、メールしか連絡手段がないと不安になります。

アスワンの宿選びでよくある疑問
Q. アスワンには何泊すればいい?
アブシンベル神殿は往復だけで6〜8時間かかります。アスワンからの日帰りなので1泊でも組めなくはありませんが、2泊あるとかなり余裕が出ます。私も2泊しました。フィラエ神殿や市街地の散策も入れたい方は、もう1泊あると余裕が出ると思います。詳しいモデルコースは、こちらのまとめ記事にまとめています。
→ 【アスワン観光まとめ】アブシンベルの行き方・フィラエ神殿・宿選び・移動手段を解説
Q. 郊外の宿でも観光はできる?
「移動手段をどう確保するか」がすべてです。ツアーの送迎が宿まで来てくれるなら郊外でも問題ありませんが、自力で市街地に出る前提だと一気に難易度が上がります。予約前に、その宿までツアーの送迎が来られる場所かどうかを確認しておくのが一番の対策だと思います。
Q. アスワンでUberは使える?
私が2024年11月に東岸南部の郊外で試した限りでは、UberもCareemも一度もマッチングしませんでした。2026年9月時点で調べると、Uberの公式エジプト対応都市一覧にアスワンの記載はなく、Careemはアスワン向けのドライバー登録ページがある状態です。ただしサービスがあることと、実際に車が捕まることは別なので、使えない前提で計画を立てておくのが安全だと思います。移動はタクシーの交渉か、宿・ツアー経由の手配が基本になります。
今回訪れた場所一覧
| スポット名 | 場所 |
|---|---|
| Endo Mando(宿泊したゲストハウス) | Googleマップで見る |
※宿泊料金は2024年11月に実際に支払った金額です。青の村へのボート料金・公共フェリー・配車アプリの状況などの周辺情報は、記事更新時点(2026年9月)で確認できる情報をもとに追記しています。エジプトは料金や運用の変更が頻繁なため、訪問前に最新情報のご確認をおすすめします。
次の記事では、翌朝起きた「予想外のトラブル」をレポートします。
→ 【エジプト旅行㉚】アブ・シンベル神殿に行けない!?送迎トラブルとイシス神殿への転換
「はじめてのエジプト旅行は添乗員付きで安心したい」という方には、JTB旅物語のパッケージツアーも選択肢のひとつです。
▶ JTB旅物語のエジプトツアーを見てみる
アスワン・アブシンベルのまとめ記事はこちらの記事で紹介してます。
→ 【アスワン観光まとめ】アブシンベルの行き方・フィラエ神殿・宿選び・移動手段を解説
アブシンベルへのアクセス方法の詳細はこちらでまとめています。
→ アブシンベル神殿の行き方まとめ|ツアー・料金・注意点【アスワン発】
「アブシンベルとフィラエ神殿のどちらを優先すべきか迷う」という方には、比較記事もあります。
→ アブシンベル vs フィラエ神殿 どちらに行くべき?料金・感動・アクセスを比較


コメント