※この記事は「ランタンを追うひとり旅。」シリーズです。前回の記事は→ホイアン到着初日、まさかの大洪水。ランタン祭り前夜に起きた想定外の1日
この記事でわかること
- ホイアンで遭遇した突然の大規模洪水(2025年11月の歴史的洪水)
- 膝まで浸かった脱出の実体験
- 宿のおばさんに救われた人情エピソード
- ダナンへの緊急避難&Agodaで直前予約した宿
- ダナンの絶品グルメ(コムガー・バインセオ・エッグクリームコーヒー)
【2日目:目覚めたら街が川になっていた】
昨夜から降り始めた雨は、夜通し止むことなく豪雨となって降り続けていました。激しい雨音に何度も目を覚まし、そのたびに「明日、どうなるんだろう」という不安がよぎります。ベランダに出ることもできず、ガラス越しに覗いた外の世界はただただ深い闇に包まれていました。
朝6時:ベランダから見えた衝撃の光景
ようやく空が白み始めた朝6時。雨足が弱まったのを見計らってベランダから身を乗り出すと、目に飛び込んできたのは昨日とは一変した景色でした。
「道路が……冠水している?」

上からでは状況がよく分からず、急いで1階のロビーへ。そこで目にしたのは、ホテルの前の道路が完全に「川」と化している光景でした。時折、地元の方が膝下まで水に浸かりながら、平然とした様子で歩いていく姿が見えます。

私が宿泊したホテルは、川から5分くらい歩く離れた場所です。それがこの状態なので、川側は、相当冠水してたと思います。これがホイアンでは日常茶飯事のことなのか、それとも異常事態なのか。水はすぐに引くのか、それともさらに増えるのか。現地の事情が分からない私には、判断のしようがありませんでした。
ホイアンは雨季(10〜11月)に旧市街が冠水することで知られており、ボートで移動する光景も珍しくないそうです。頭では知っていても、実際に目の当たりにするとまったく別の話でした。
【後から知った事実】1964年以来の歴史的洪水だった
後から知ったのですが、私が遭遇したこの2025年11月初旬の洪水は、ホイアンでは「1964年以来の歴史的洪水」と報じられる規模だったそうです。トゥボン川の水位は一時2.7メートルを超え、世界遺産の旧市街は腰の高さまで浸水。住民は木製のボートで市内を移動するほどでした。私が「異常事態か日常か判断できない」と感じたのは、まさにそのレベルの大洪水だったわけです。
交錯する不安と迷い
部屋に戻っても、頭の中では最悪のシナリオがぐるぐると駆け巡ります。
「今夜のランタン祭りは、本当に開催されるのか?」
「明日はチェンマイへの移動日。そもそも空港へ向かう足はあるのか?」
「このままホイアンに閉じ込められてしまうのではないか?」
「水が引いた瞬間に、この街を脱出したほうがいいのか?」
期待していたランタン祭りへの希望と、移動手段を失うことへの恐怖。正解が見えないまま、時間だけが過ぎていきました。
8:00:静寂のなかでいただく朝食
昨日約束した朝食の時間になり、再び1階へ。ロビーには昨日と同じおばさんがいて、「座って待ってて、今出すからね」と声をかけてくれました。
まず運ばれてきたのは、温かいお茶と、ゆっくりと滴り落ちる濃厚なベトナムコーヒー。そして、丁寧に盛り付けられた朝食。

ホイアンの名物料理であるカオラウ(Cao Lầu)。一説では日本の伊勢うどんとの関連も指摘されていますが、起源には諸説あり、はっきりとは分かっていません。太くてコシのある麺に甘辛いタレを絡めていただくスタイルで、柔らかいチャーシュー、シャキシャキのもやし、カリカリの揚げ豚皮が乗っています。別添えのタレを好みの量で回しかけ、全体を混ぜていただきます。

さらに、サイドには山盛りの新鮮なレタスやハーブ、そして焼き立てのクロワッサンまで。
屋外の冠水した風景を横目に、濃厚なベトナムコーヒーの香りに包まれながらいただく食事。温かいお茶を飲み終える頃には、少しずつ冷静さを取り戻し、「まずは情報を集めて、今できることをしよう」と自分に言い聞かせることができました。
「水位はさらに上がる」という宣告
食後、様子を見に来てくれたあのおばさんが、心配そうに「あなた、これからどうするの?」と声をかけてくれました。
私はカタコトの英語とGoogle翻訳を駆使して尋ねました。
「この水はいつ引くんですか? あとどのくらいでなくなりますか?」
しかし、返ってきた言葉は、予想もしない絶望的な一言でした。
「水は引かないわよ。今からもっと水位は上がるんだから」
その言葉を聞いた瞬間、血の気が引くのが分かりました。
今この時点ですら、ホテルの前の道路は川と化し、タクシーはおろか車が入り込めるような状態ではありません。
「もしかして、ホイアンから出られない……?」
明日の午前中にはダナン空港に到着し、チェンマイへの飛行機に乗らなければなりません。もしこのまま水位が上がり続け、完全に孤立してしまったら、すべての予定が崩れ去ってしまいます。
優雅にカオラウを味わっていた先ほどまでの穏やかな空気は一変し、一気に現実的な恐怖が押し寄せてきました。
【海外で命綱になるデータ通信】
ちなみに、Google翻訳でおばさんとやり取りできたのも、ahamoの海外データ通信(月30GBまで追加料金なし)が現地でそのまま使えていたからこそ。緊急時にスマホがネットに繋がる安心感は、海外旅行で本当に大事だと改めて実感しました。
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脱出決定:フル装備のおばさんと超速パッキング
「ダナンに戻れるかな? 明日どうしても飛行機に乗らないといけないんです」
と尋ねる私に、おばさんは「……今日戻る?」と短く聞き返してきました。
明日になればさらに状況が悪化し、完全に身動きが取れなくなるかもしれない。「できるなら今日がいいかな。タクシーとか呼ぶことできるの?」と答えました。
おばさんは「でも、あなたは2泊で予約しているから、返金は……」と宿泊費の話を切り出そうとしましたが、「私の都合で急遽キャンセルするのだから、返金は一切不要です!」と伝えると、彼女は意を決したようにスマホを取り出し、どこかへ連絡し始めました。
途中、おばさんは「行き先は?」と言うので「ダナンだけどホテルはまだ決めてない」と答えました。
電話を終えたおばさんは、真剣な表情で私を見つめました。
「30分で準備できる?」
「短っ!」と思わず心の中で突っ込みましたが、一刻を争う水位の上昇を懸念しての提案なのでしょう。
私は弾かれたように部屋へ戻り、最初にagodaでダナンのホテルを探します。昨日宿泊したダナンのホテル探しの時の第2、第3、第4候補がお気に入りに残ってたので、その中から安いホテルを予約しました。お気に入りに入れたホテルを残してたのが功を奏しました。そして猛スピードで荷物をパッキングし始めました。
【緊急時こそクレカの底力】
このとき、急遽Agodaで宿を取れたのも、現地でタクシー代や食事代の現金が足りなくなってもエポスカードの海外キャッシングで即対応できる安心感があったからこそ。緊急時は「カードがあれば何とかなる」という心理的余裕が判断を救ってくれます。エポスNetアプリからデータ反映後すぐに繰り上げ返済すれば利息も最小限です。
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嵐のパッキングと「フル装備」の助っ人
準備を始めてから20分ほど経った頃、部屋のドアが激しくノックされました。
「準備できた?」とおばさんの声。
「まだ! あと少し待って!」
約束の30分すら経っていないのに、まさかの10分前倒しです(笑)。
「ちょっと待って」と言ってもまたノックしてきます。
とりあえず服を着てドアを開けると、そこには、冠水した道に立ち向かうべく長靴にカッパを身に纏った「フル装備仕様」のおばさんが立っていました。
「あとちょっとだけ!」と伝えると、おばさんは部屋の中までズカズカと入ってきて、棚の上に置いてあった小物や、充電中だったモバイルバッテリーをテキパキと取り外し、私のバックパックの横にガサッとまとめ始めました。
フル装備のおばさんに、有無を言わさぬ勢いで急かされる非日常的な光景。焦っているはずなのに、そのおばさんの行動がおかしくて笑いがこみ上げてきました。その強引な手際の良さが、まるで久しぶりに帰省した実家で親戚のおばちゃんに世話を焼かれているようで、不思議なほど心強かったのです。
「サンダル持ってる? 足は膝くらいまで濡れるから履き替えなさい」
「ここから冠水していない場所まで歩くわよ。そこにタクシーを待たせてあるから」
戦友のような頼もしさを見せるおばさんに導かれ、いよいよ浸水した街へと足を踏み出すことになりました。
濁流を越えて:膝まで浸かりながらの脱出
いよいよホテルを出発。目の前に広がるのは、もはや「道」ではなく完全に「川」となった光景です。車道側ではなく歩道側は少し高くなってるため、まだ浅かったですが車道側は、おばさんの言った通り膝近くまで迫ってきました。
「絶対に転べない……」
バックパックを背負ったまま、もしここで足を取られれば、荷物もカメラも、そして自分自身も水に飲み込まれてしまいます。地面の様子が分からない水の中を、一歩一歩、確実に行き先を確かめるように慎重に進んでいきました。

一方で、フル装備のおばさんはこの状況に慣れているのか、水の中でも驚くほど素早い足取りです。スタスタと先へ進んでは、遅れる私を振り返って待ち、また進む……という動作を繰り返しながら、私を先導してくれました。
必死に歩いている最中、ふと前を見ると、カヤック?SUP?のようなボートに乗って楽しそうに撮影をしている人たちの姿がありました。こちらは明日無事に出国できるか必死なわけですが、そのあまりにシュールで非日常的な光景に、どこか現実味のない不思議な感覚に陥ります。

重い足取りで5分くらい歩き続けるうちに、徐々に水位が下がっていくのを感じました。ふと顔を上げると、300メートルほど先にアスファルトが顔を出している「冠水の終わり」が見えてきました。そこには、ポツンと1台の車が待機しています。

「あの車だよ」とおばさんが指差しました。
想定外の優しさと、ホイアンとの別れ
車に辿り着いたとき、おばさんが信じられないことを言いました。
「タクシー代はもう支払い済みだから、運転手にお金は払わなくていいからね」
「えっ、今なんて?」と思わず耳を疑いました。不思議そうな顔をする私に、彼女は重ねて言いました。
「宿泊費の返金ができない代わりに、私たちがタクシー代を払っておいたから。ダナンのホテルの前でそのまま降りていいのよ」
頭の中が混乱しました。海外旅行では常に「ボッタクリ」を警戒し、気を張っていた私にとって、それは全く予想外の言葉でした。おばさんが「いい人」なのは分かっていましたが、ここまで誠実で温かい対応をしてくれるなんて。
言葉にできない感謝を込めて「Thank you」と伝え、タクシーに乗り込みました。スマホで予約したホテルの画面をドライバーに見せ、車がゆっくりと走り出します。
予定していたランタン祭りは見られなかったけれど、タクシーの車窓から景色を眺めながら、言葉にできない感謝と、自分でも驚くほど胸が熱くなったのを今でも鮮明に覚えています。
人の温かさに救われた、忘れられないホイアン滞在となりました。
早めの決断が正解だった
余韻に浸りながら、タクシーの車窓から外を眺めていると、道中にも大雨の影響を受けてる場所がいくつもありました。もしあのままホイアンに留まっていたら、都市間の道路が通れなくなった可能性も考えられます。「早めに行動して、本当に正解だった……」と、遠ざかるホイアンの景色を見ながら胸をなでおろしました。
ホイアンで冠水に遭遇した場合、車が入れないエリアも多く、徒歩で水のないエリアまで移動してからタクシーを拾う必要があります。心配だなと感じたら、早めに宿のスタッフに相談するのが得策です。
【ホイアンへの旅行を計画している方へ】
ホイアンは雨季(10〜11月)に毎年のように冠水する街です。旅行時期を選ぶ際は、この時期は冠水のリスクがあることを念頭に置いてください。万が一に備えて、海外旅行保険付帯のクレジットカードを持っておくと、緊急時のホテル変更やキャンセル料発生時に安心です。
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ダナン到着:1,700円の宿と真っ白になった予定表
急遽、Agodaの直前予約で滑り込んだのは、ダナン市内の「セントラル ホテル & スパ ダナン(Central Hotel & Spa Danang)」。1泊わずか1,778円という安さですが、ロビーは清潔で一安心です。ダナンの宿泊費の安さには、こういう緊急時に本当に助けられます。

まだチェックインまで時間があったため、バックパックを預けて街へ。本来なら今頃はホイアンにいるはずでしたが、予定は真っ白。雨に濡れるダナンの街を歩きながら、ひとまず近くのカフェへ飛び込みました。

冷たいコーヒーを片手に、スマホでこれからの作戦会議です。天気も優れず、観光スポットへ行くには中途半端な時間。ならば今日は、ダナン自慢のグルメとカフェを心ゆくまで楽しむ一日にしようと決めました。

至福のダナングルメ巡り:コムガーとエッグクリームコーヒー
ホテルにチェックインして一息ついた後、目の前にあった有名店「コムガー・アーハーイ(Cơm gà A Hải)」へ向かいました。

運ばれてきたのは、黄色みを帯びた香り豊かなチキンライスに、パリッと揚げ焼きにされたジューシーな鶏肉がドーンと乗ったコムガー。添えられたスープやピクルスとの相性も抜群で、移動の緊張で強張っていた体が、現地の味で少しずつほぐれていくのを感じました。

食後は腹ごなしにダナンの街を散策。異国の熱気と雨の匂いが混ざり合う街角を歩き、次に見つけたカフェへ。

ここでのお目当ては、ベトナムの名物「エッグクリームコーヒー」です。
グラスに注がれた濃厚なコーヒーの上には、驚くほどふわふわでクリーミーな卵の泡がたっぷり。一口飲むと、カスタードのような甘みとコーヒーの苦みが絶妙に溶け合い、疲れがすーっと引いていくような贅沢な味わいでした。

エッグクリームコーヒーで至福のひとときを過ごした後は、夕食を求めて再びダナンの街へ。今夜のターゲットは、ベトナム風お好み焼きとも呼ばれるバインセオです。
やってきたのは、地元の人たちで活気にあふれるバインセオ・ラング(Bánh Xèo Làng)。運ばれてきた瞬間、そのボリュームと鮮やかな彩りに圧倒されました。

鉄板でカリッカリに焼き上げられた黄金色の生地の中には、ぷりぷりのエビや豚肉、シャキシャキのもやしがぎっしり。乾燥したライスペーパーにちぎったバインセオと山盛りのレタス・香草を乗せて巻き、自家製の特製ダレにたっぷりディップしていただきます。口に運んだ瞬間、生地のカリッとした食感、ハーブの爽やかな香り、具材の旨みが一体となって弾けました。

隠れ家カフェでの出会い:アボカドコーヒーと夜景の締めくくり
バインセオでお腹を満たした後は、ダナンの路地裏に佇む隠れ家的なカフェ「Trình cà phê」へと足を運びました。緑豊かなガーデン席と、古民家を改装したようなレトロで落ち着いた雰囲気が魅力的なカフェで、地元の若者たちも思い思いにリラックスした時間を過ごしていました。

ここでのお目当ては、ベトナムの進化系コーヒーとして知られるアボカドコーヒー(Sinh Tố Bơ Café)です。

「コーヒーにアボカド……?」と意外な組み合わせに驚くかもしれませんが、運ばれてきたのは、アボカドシェイクに、濃厚なベトナムコーヒーの層が美しく重なった一杯。ストローで混ぜて飲むと、アボカドのまったりとした濃厚なコクと、コーヒーの苦味、そして練乳の甘さが絶妙にマッチして、まるで贅沢なスイーツを食べているような感覚になります。トッピングのココナッツチップのカリカリ感も良いアクセントで、一度飲んだら病みつきになる美味しさでした。
ダナンの夜景で締めくくった、波乱の一日
アボカドコーヒーを堪能した後は、少し涼しくなったダナンの街をのんびりと散歩しながらホテルへと戻りました。

ホテルに着き、何気なくエレベーターに乗ると「屋上にプール」の文字が。少し気になって覗いてみることにしました。
最上階で扉が開いた瞬間、目の前に広がっていたのは、キラキラと輝くダナンの夜の街を一望できるパノラマビューでした。ライトアップされたビル群や、遠くまで続く街の灯り。プールの水面に夜景が反射し、昼間のあの濁流の中にいたことが嘘のような、静かで美しい時間が流れていました。

朝はホイアンで水の中を膝まで浸かって歩き、一時はどうなることかと本気で焦りましたが、気が付けばダナンの絶景夜景で一日を締めくくっている。

「旅は何が起こるか分からない」
そんな旅の醍醐味を、文字通り肌で感じた波乱の二日目。明日は無事に空港へ辿り着き、次の目的地であるタイ・チェンマイへと飛べることを願いつつ、心地よい疲れとともに眠りにつきました。
今回急遽宿泊したホテルはダナン市内の「セントラル ホテル & スパ ダナン(Central Hotel & Spa Danang)」。1泊わずか1,778円という安さでした。


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明日はいよいよダナン最終日。早朝の絶品バインミー店と空港ラウンジを満喫したあと、タイ・チェンマイへと向かいます!
→次の記事:ダナン最終日|絶品バインミーと空港ラウンジを満喫してチェンマイへ移動
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