前回の記事は↓
【エジプト旅行⑯】ルクソール西岸ツアー開始|ハトシェプスト女王葬祭殿の絶景
王家の谷(Valley of the Kings)とは|ルクソール西岸の王墓群
ハトシェプスト女王葬祭殿を後にし、アリーさんの車でさらに岩山の奥へと進みます。次の目的地は、ルクソール西岸にある世界遺産「王家の谷(Valley of the Kings)」。
乾いた岩山の奥に広がるこの谷には、新王国時代のファラオたちの墓が64基発見されており、地下深くへと続く通路と、色鮮やかな壁画で知られる世界的な遺跡です。
チケットシステムと注意点
ビジターセンターに到着すると、まず精巧な立体模型が迎えてくれます。地下に広がる迷宮のような墓の構造を見ているだけで、これからの探検への期待が高まります。

基本チケットの仕組み
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 基本チケット料金 | 750エジプトポンド(2024年11月時点) |
| 入れる墓の数 | 公開されている墓の中から好きな3つを選択 |
| 支払い方法 | クレジットカードのみ(現金不可) |
| おすすめカード | VISA / Mastercard(Amex・JCBは使えない場合あり) |
⚠️ 料金は半年単位で値上がりする傾向があります。最新情報はエジプト観光・考古学省の公式サイトでご確認ください。
追加料金が必要な墓
| 墓の名前 | 追加料金 | 日本円換算(目安) |
|---|---|---|
| ツタンカーメンの墓(KV62) | 700 EGP | 約2,200円 |
| ラムセス5世・6世の墓(KV9) | 220 EGP | 約700円 |
| セティ1世の墓 | 2,000 EGP | 約6,400円 |

私は基本の3つに加えて、特に保存状態が良いと評判のラムセス5世・6世の墓とツタンカーメンの墓の追加チケットも購入。合計料金は1,670 EGP(日本円で5,316円)でした。
💳 エジプト観光の重要注意:入場料は「完全カード払い」
王家の谷をはじめとするエジプトの主要観光施設では、現金での入場料支払いができません。窓口は「カード決済のみ(Cards Only)」です。

なぜカード払いのみなのか?主な理由は以下の3つです。
- 不正・横領の防止:現金払い時代の着服や不透明な会計を排除。デジタル決済で政府の管理システムに直接記録します。
- 外貨の確実な管理:観光業はエジプトの重要な外貨獲得源。公式な銀行ルートを通すことで外貨を正確に管理する狙いがあります。
- 窓口の効率化:お釣りトラブルをなくし、混雑する窓口での待ち時間を短縮します。
📛 カードは最低2枚、できれば3枚以上持参を。磁気不良や通信エラーで使えないケースも。私は念のため5枚持って行きました(笑)。結局使ったのは1枚だけでしたが、精神的な安心感は絶大です。
おすすめ:VISA / Mastercard(Amex・JCBは使えない場合あり)
🚃 トラムで墓エリアへ移動
チケット売り場から実際の墓があるエリアまでは約500〜700mあるようなので、「トラム(Tram)」と呼ばれるゴルフカートのような乗り物で移動するのが一般的です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 料金 | 20エジプトポンド(往復・約60〜70円) |
| 支払い | 現金(トラムは現金のみの場合あり) |
| 購入場所 | チケット売り場の建物を出て右側の専用窓口 |
💡 歩いても行ける距離ですが、炎天下の移動はかなり消耗します。素直にトラムを使うのがおすすめです。

3,500年前の色彩が息づく「ラムセス4世の墓(KV2)」
トラムを降りて最初に向かったのは、入り口からほど近い場所にあるラムセス4世の墓(KV2)です。一歩足を踏み入れた瞬間、その保存状態の良さに言葉を失いました。

ここが凄かった!ラムセス4世の墓
① 3,500年前とは思えない「カラフルな壁画」
通路の壁一面、どこを見てもびっしりと文字(ヒエログリフ)や絵が刻まれています。驚いたのはその色の鮮やかさです。青いラインの上に、黄色や赤で色づけされた文字が整然と並んでいて、まるで現代のオシャレなデザインペーパーのよう。「これ、本当に数千年前の天然の絵の具なの?」と疑いたくなるほど、生き生きとした色が残っていました。


② 天井いっぱいに広がる「星空と女神」
奥の広い部屋で見上げた瞬間、思わず「わあ……」と声が漏れました。深い紺色を背景に無数の星が描かれ、まるで地下に宇宙が広がっているみたい。細長く描かれているのは天空の女神ヌトで、「夜に太陽を飲み込み、朝にまた産み落とす」という再生の物語に、当時の人たちのロマンを感じました。


別格の美しさ「ラムセス5世・6世の墓(KV9)」【追加料金220EGP】
次に訪れたのは、追加料金が必要なラムセス5世・6世の墓(KV9)。

⚠️ 追加チケットはお墓の入り口では購入できません!「やっぱり入りたい」と思ってもチケット売り場まで戻る必要があります。必ず最初に決めておきましょう。
結論から言うと、「追加料金を払う価値、大あり」でした。
① どこまでも続く、色彩のトンネル
入り口から奥へと続く通路がとにかく長く、その壁と天井のすべてが隙間なく鮮やかな彫刻と彩色で埋め尽くされています。先ほど見たラムセス4世の墓も綺麗でしたが、ここはさらに色の密度が濃い感じ。まるで「古代エジプトの美術館」に迷い込んだような錯覚に陥ります。



② 圧巻の「二重の宇宙天井」
一番の見どころは、最奥にある玄室の天井です。天空の女神ヌトが背中合わせに2体描かれており、「昼の12時間」と「夜の12時間」を表しているそうで、黄色い太陽が女神の体を通っていく様子が物語のように描かれています。見上げすぎて首が痛くなるほどでしたが(笑)、深い紺色と黄金色のコントラストは、写真で見るより何倍も神秘的で、吸い込まれそうなパワーがありました。


③ 巨大な石棺の迫力
部屋の中央には、破壊されてはいるものの、巨大な石棺の残骸が置かれています。その周りを囲む壁画の緻密さと、地下深くのひんやりとした空気。かつてここに王が眠っていたという歴史の重みを、肌でびりびりと感じることができました。

深い青に吸い込まれる「ラムセス1世の墓(KV16)」
次に向かったのは、追加料金なしの基本チケットで入れるラムセス1世の墓(KV16)。王家の谷の中ではかなり小規模なお墓ですが、中に入った瞬間のインパクトは他を圧倒していました。
① 空間を支配する「エジプシャン・ブルー」
急な階段を下りて玄室に入ると、そこには3,500年前のものとは思えない、鮮やかな青の世界が広がっていました。壁一面を埋め尽くす背景の青が、地下の薄暗い空間でまるで夜空のように、あるいは深い水の底のように光を放っています。この青があるからこそ、その上に描かれた神々やヒエログリフの赤や黄色が、驚くほど鮮明に際立って見えるのです。

② 手が届きそうな距離にある、緻密な壁画
お墓自体がコンパクトなおかげで、壁画との距離が非常に近いのも魅力です。描き込まれた繊細なタッチをすぐ目の前で感じられるのは、小さなお墓ならではの贅沢です。


③ 中央に鎮座する、赤色花崗岩の石棺

青い壁画に囲まれた部屋の中央には、赤色花崗岩で造られた立派な石棺がそのまま残されています。これほど小さなお墓の中に、これほど大きな石棺がぴったりと収まっている様子は、当時の埋葬の緻密さと、ファラオの権威を物語っているようでした。

ラムセス1世の墓は、小規模ながらも色彩の「鮮やかさ」と「密度」においては、王家の谷でもトップクラスだと感じました。基本チケットで入れる墓として、間違いなくおすすめです!

世界で最も有名な「ツタンカーメンの墓(KV62)」【追加料金700EGP】
王家の谷を訪れる誰もがその名を知る、第18王朝の若きファラオ、ツタンカーメンの墓。追加チケット700 EGP(約2,200円)が必要ですが、歴史的な発見の舞台をこの目で見たいという一心で、迷わず購入しました。

① 意外なほどの「狭さ」に驚く
一歩足を踏み入れてまず驚いたのは、そのコンパクトさです。入り口の階段を下りると、すぐに玄室(棺が置かれた部屋)にたどり着いてしまいます。他の王たちが数十年かけて巨大な地下宮殿を築いたのに対し、若くして急逝したツタンカーメンには十分な時間がなかった……。その歴史的事実が、この「狭さ」からダイレクトに伝わってきて、なんとも言えない切ない気持ちになりました。


② あまりにも「普通」に横たわるミイラ
この墓で最も衝撃的だったのが、ツタンカーメン自身のミイラとの対面です。厳重な警備や仰々しい演出があるのかと思いきや、彼は玄室の隅にあるガラスケースの中に、驚くほど「普通」に安置されていました。布に包まれ、黒く乾燥した顔と足先が露出しているその姿は、かつて強大な帝国を統治した王というよりは、一人の華奢な少年そのもの。

「本当に、ここに彼が眠っているんだ……」
3,500年という時を越えて、今まさに自分の目の前に彼がいるという事実に、背筋がゾクっとするような不思議な感覚に陥りました。
③ 黄金色に輝く壁画と石棺
狭い玄室ですが、その壁画の密度は圧巻です。一面が鮮やかな黄金色に塗られ、そこにはヒヒの姿や、神々に迎えられるツタンカーメンの姿が力強く描かれています。部屋の中央には巨大な石棺が鎮座しており、かつてはこの中にあの有名な黄金のマスクを被ったミイラが納められていたのかと思うと、その歴史の重みに圧倒されました。


④ 追加料金を払う価値はあるか?
「狭いし、壁画も一部にしかないからガッカリする」という口コミもありますが、私は「絶対に入るべき」だと断言します。確かに豪華さでは他の墓に譲るかもしれませんが、発見された当時のままの場所で、王のミイラと静かに向き合える時間は、他の何物にも代えがたい特別な体験でした。

最後の1枚「ラムセス7世の墓(KV1)」
基本チケット3つ目に選んだのは、入り口のすぐ近くに位置するラムセス7世の墓(KV1)。階段や通路が短く、サクッと見学できるのが嬉しいポイントです。

① 未完成ゆえに伝わる「歴史のリアル」
ラムセス7世の墓(KV1)は、王の在位がわずか7年で終わったため、
計画よりも小規模な構造になったと考えられています。
もともとはさらに奥へ部屋を掘り進める予定だったと見られますが、王の死によって工事は途中で止まり、現在のような短い構造の墓になりました。
そのため、この墓には王家の谷の中でも
「急な埋葬の現実」がそのまま残っているとも言われています。

② 天井に広がる「星空の女神」との再会
一番奥の玄室にたどり着くと、ここでも天空の女神ヌトが迎えてくれました。深い青地に黄色の星々が散りばめられたデザインは、何度見ても飽きることがありません。地下の暗闇の中で、王が永遠に夜空を見上げられるように……という当時の人々の願いが、狭い空間だからこそより身近に感じられました。

③ 床に彫り込まれた珍しい「石棺」
このラムセス7世の墓では、床の岩盤を彫り抜いてその中に棺が収められていた形跡(穴)が見られます。他の豪華なお墓とはまた違う、独特で質実剛健な造りに、当時の埋葬スタイルのバリエーションを垣間見た気がしました。

「3500年前の壁画の横に、160年前のサインが……」 ラムセス7世の墓をじっくり観察していると、壁画に混じって『MOGINIE FISHER FEB.5.1858』という文字が彫り込まれているのを見つけました。
これは1858年2月5日にこの場所を訪れたイギリス人(あるいは英語圏の人物)によるものと考えられてるそうです。
19世紀半ば、ナポレオンのエジプト遠征以降、ヨーロッパでは空前の「エジプトブーム」が起きていて、当時はまだ遺跡保護の概念が薄く、訪れた記念に自分の名前や日付を壁に彫り込むのが、当時の旅行者たちの「ステータス」のようになっていたようです。
現代ではもちろん厳禁ですが、これらの古い落書きは、今となっては「いつ、誰がここを訪れたか」を示す貴重な歴史資料として、あえて消されずに残されています。
1858年といえば、日本ではまだ江戸時代(安政5年)。幕末の動乱期に、遠くイギリスからこのルクソールの地を訪れた誰かがいた。そう思うと、古代エジプトの歴史に、近代の旅人の歴史がレイヤー(層)のように重なっているのを感じて、なんとも不思議な気持ちになりました。

【個人的】王家の谷おすすめ墓ランキング
実際に5つのお墓を見て回った、個人的な感想によるランキングです。
| 順位 | 墓の名前 | 追加料金 | おすすめポイント |
|---|---|---|---|
| 🥇 1位 | ラムセス5世・6世の墓(KV9) | 220 EGP | 圧倒的な壁画の密度と二重の宇宙天井。追加料金でも絶対見るべき |
| 🥈 2位 | ラムセス1世の墓(KV16) | なし | エジプシャンブルーの美しさが圧巻。基本チケットで最高コスパ |
| 🥉 3位 | ラムセス4世の墓(KV2) | なし | 保存状態が素晴らしく、初心者にもおすすめ |
| 👑 特別枠 | ツタンカーメンの墓(KV62) | 700 EGP | 豪華さより「歴史の重み」。王のミイラを実際に見られる唯一無二の体験 |
王家の谷を巡り終えて
太陽の下、地下に広がる5つのお墓を巡り終えた頃には、感動で満たされていました。
ルクソール観光の中でも、王家の谷は間違いなくハイライトのひとつでした。
再びアリーさんの待つ車へ。次に向かうのはメディネト・ハブ(Medinet Habu)。西岸観光の旅はまだまだ続きます。
ルクソールにはこの他にも多くの見どころがあります。
王家の谷やルクソール神殿など、ルクソール観光のまとめはこちらの記事で紹介しています。
→ ルクソール観光まとめ


コメント