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【エジプト旅行㊱】カフラー王・メンカウラー王のピラミッドへ|三大ピラミッド制覇と地下迷宮の体験記
三大ピラミッドをすべて巡り終え、出口へと向かいます。来た道とは少し違うルートを歩いていると、スフィンクスが横から姿を現しました。

朝に正面から見たスフィンクスとは違い、横からの姿はまた別の迫力があります。何千年もの時を経て、今もここに在り続けているという事実を、改めて実感した瞬間でした。
横から見るスフィンクスの迫力
横から見るスフィンクスは、正面からでは分からないその「巨大な体躯」に圧倒されます。全長約73メートルという驚異的な長さ。足元をよく見ると、何度も修復を繰り返してきた石積みの跡が、パッチワークのように重なっているのが分かります。

風化して丸みを帯びた顔と、対照的に角ばった足元の石。数千年の風雪に耐え、今もこうして「現在」の街を見つめている。その背中越しに近代的なビル群が見える光景は、エジプトでしか味わえない、独特の風景でした。

ギザのピラミッドは混雑する?実体験レビュー
結論から言うと、ギザのピラミッドは時間帯によって混雑度が大きく変わります。
遠足の子供たちで賑わう午前後半
帰り道で驚いたのが、観光エリアの賑わい方です。入場した朝7時台とは別世界——。
地元の学校の遠足でしょうか、子供たちの団体があちこちで見られました。元気いっぱいの子供たちがピラミッドをバックに写真を撮ったり、パタパタと走っていたりする光景は、なんとも微笑ましいものでした。エジプトの子供たちにとっても、ピラミッドは「遠足の定番スポット」なのかもしれません。

あちこちから聞こえてくる「Hello!」とか「ニーハオ!」という元気な声は、なんとも平和なものでした。ちなみに「こんにちは」は言われませんでした(笑)。
観光バスも次々と到着し、駐車場は満車状態。入場直後の静かなエリアの面影はどこにもありませんでした。出入り口付近はあまりにも人が多すぎて、ピラミッドエリアから出るのもひと苦労でした。時間が経つにつれて砂埃もひどくなり、空気感もすっかり変わっていました。
静寂のクフ王内部を体験した後だっただけに、この日常の喧騒が、まるで異世界から現実へ引き戻してくれるゲートのように感じられました。

早朝入場が圧倒的におすすめな理由
今回ピラミッド観光を通じて強く感じたのが、「時間帯が体験の質を大きく左右する」ということです。
| 時間帯 | 混雑度 | 快適さ | 写真 |
|---|---|---|---|
| 7〜8時台(開場直後) | 少ない | ◎ 涼しく静かでゆっくり観光できる | ◎ 背景に人が写り込まない |
| 9〜10時台 | 増えてくる | 〇 まだ動きやすい | 〇 まだ撮りやすい |
| 11時以降 | かなり多い | △ 日差しが痛く砂埃も増す | △ どこを撮っても観光客が入る |
早朝に入場して本当によかったと思います。静かな砂漠の空気の中、ピラミッドをほぼ独り占めできたあの時間は、混雑した昼間では絶対に味わえないものでした。「ピラミッドと自分だけの世界」を写真に残したいなら、やはり開場直後が最もおすすめです。

帰る頃に見かけた、強い日差しの中で行列に並ぶ人たちの姿を見て、早起きの自分を心から褒めてあげたくなりました。

Mall of Egypt:砂漠の中の「氷の異世界」
ピラミッド観光を終えた後は、近くにある大型ショッピングモール「Mall of Egypt」へ足を向けました。ギザのピラミッドから車で10〜15分ほどの場所にある、エジプト最大級のモールのひとつです。

正直なところ、モール自体は日本の大型ショッピングモールと大きく変わらない雰囲気。エアコンが効いていて快適ですが、特別な感動があるわけではありません。
しかし、その中で唯一、強烈なインパクトを放っていたのが「スキー・エジプト(Ski Egypt)」でした。ガラスの向こうには、なんと本物の雪で作られた室内スノーパークが広がっているのです。防寒着を着込んだ人たちが雪遊びを楽しむ様子が見えました。

💡 Ski Egyptとは?
アフリカ初の室内スキーリゾートで、7,700平方メートルのスノーパーク。マイナス2度に保たれた施設内で、本物の雪の上でスキーやスノーボード、チュービングなどが楽しめます。Mall of Egypt内に位置しており、砂漠の国エジプトで雪遊びができるという、なんとも不思議な体験ができる場所です。
数時間前まで砂まみれで古代の石に触れていた自分にとって、この「砂漠の中の雪景色」という究極のギャップは、なんとも旅らしくて、シュールな光景でした。

宿近くの日常へ:結局、これが落ち着く
モール内にはスターバックスや映画館などもありましたが、特に長居することもなく、食事もせずに宿の近くへと戻ることにしました。夕暮れのギザの街並み。ピラミッドエリアの観光客向けの賑わいとは違い、ここには地元の人々の、等身大の生活があります。通りにはフルーツを並べた屋台が出て、焼きたてのパンの匂いが漂ってくる。この少し雑多で、でも温かい空気感に触れると、心からホッとする自分がいました。

ギザの夜を締めくくる、地元の味
夕食は、宿の近くにあったローカルのグリル食堂「Zaman(مشويات زمان)」へ。ギザ周辺でよく見かけるタイプのローカル食堂です。メニューを眺め、エジプトの定番料理コフタ(Kofta)を注文しました。

運ばれてきたのは、炭火で焼かれた香ばしい肉団子に、焼きたてのアエイシ(ピタパン)、そして新鮮な野菜サラダ。「Mall of Egypt」のようなピカピカの空間ではありませんが、地元の人々に混じって食べる、この素朴で力強い地元の味こそが、一日中歩き回った体を癒やしてくれる最高の贅沢でした。


食事を終え、食堂の外でくつろいでいた人懐っこい猫に「ごちそうさま」を言って宿へ向かいます。

パピルス探しと、夜のギザを駆ける「ビール調達大作戦」
宿に向かって歩いていると、一軒のお土産屋が目に留まりました。宿で見かけたパピルスの絵が素敵だったので、「自分用にも似たようなものが欲しいな」と思い、ふらりと入ってみることに。

店内には魅力的な工芸品が所狭しと並んでいます。すると、店員らしきおじさんが笑顔で近寄ってきて、冷えたハイビスカスティーを差し出してくれました。エジプトではカルカデ(Karkade)と呼ばれる定番の冷たいお茶で、その一杯は体に染み渡る美味しさでした。


ティーを飲みながら眺めていると、別の男性が登場。「何を探しているの?」と声をかけてきました。どうやら最初のおじさんは従業員で、彼がオーナーのようです。
蓄光する「本物(風)」パピルスとの出会い
「パピルスはこれだけですか?」と尋ねると、奥の別室へ案内されました。そこには、数えきれないほどのパピルスが!

オーナーは「これは本物だよ!」と熱烈にアピールしてきますが、なんとそのパピルス、「蓄光塗料が塗ってあって、電気を消すと別の絵が浮かび上がる」というハイテク(?)仕様。その瞬間、「いや、それ絶対本物(古代の製法)じゃないだろ!」と心の中でツッコミを入れましたが、そこはご愛嬌。
💡 エジプトのパピルス豆知識
エジプトの土産屋で売られているパピルスの多くは、バナナやサトウキビの繊維で作られた「パピルス風」の紙とされています。本物のパピルスは光に透かすと繊維が縦横に交差して見え、折っても跡が残りにくいのが特徴です。私はただ「エジプトらしい絵が欲しかった」ので、細かいことは気にしませんでした(笑)。
最初は観光地価格を提示されましたが、交渉の末「複数買うなら安くする」とのこと。結局、予定より多い5枚を購入しました。多少の観光客価格だったとは思いますが、欲しかったものなので後悔はありません。
トゥクトゥクで夜の街へ:ビールを求めて
店を出たところで、先ほどの従業員のおじさんと再会しました。ふと思いついて「この辺でビールを買える場所はない?」と聞くと、おじさんの目が輝きます。
「ビールか?よし、一緒に行ってやるよ!」
知り合いの店に連れて行かれてぼったくられるかも……という不安が頭をよぎりましたが、おじさんの人柄が良さそうだったこと、そして「多少の授業料だと思えばいい」と腹をくくり、そのままついていくことにしました。
難易度の高いエジプトの大通りも、地元の人の後ろならスムーズに渡れます。そのまま裏道へ入り、地元の賑わいの中を進むと、おじさんがトゥクトゥクを捕まえ「乗れ!」と合図。このトゥクトゥクが、まるで遊園地のアトラクション!夜のギザを猛スピードで駆け抜けるドライブは、この旅で一番スリルがあって楽しい時間でした。

「ぬるいビール」とムスリムの日常
数分走って到着したのは、一見お酒を売っているようには見えない、地元の小さなお店。おじさんがビールを調達してくれ、再びトゥクトゥクでお土産屋まで戻ります。入り口にある花壇の端に座り、おじさんと二人でいよいよ乾杯——。
ところが、ビールを手渡された瞬間に衝撃が走ります。手のひらから伝わるのは、冷たさとは無縁の「常温」の感触。
……ぬるい。とにかく、ぬるいのです。
私はぬるいビールが大の苦手。一口飲むと、その確信は絶望へと変わりました。しかし、一生懸命買ってきてくれたおじさんの手前、飲まないわけにはいきません。これも旅の一部だと割り切り、苦笑いしながら喉に流し込みました。
「ムスリムの人はお酒はダメじゃないの?」と聞くと、おじさんは「そんなの関係ないよ(笑)」と一蹴。信仰は人それぞれで、人によっては普通に楽しんでいる——そんなエジプトのリアルな一面を垣間見た気がします。
満足感いっぱいの帰り道
おじさんへの支払いは、少し多めのチップ込みといった程度で、決して法外な請求ではありませんでした。あのトゥクトゥクの爽快感と、地元の人しか知らない裏路地を歩けた体験を考えれば、十分すぎるほど価値のある投資でした。
15分ほど夜の空気の中で語り合い、おじさんが店に呼ばれたタイミングで「じゃあ、私は宿に戻るよ」とお別れ。パピルスを抱え、宿への帰り道を歩きます。

サウンド&ライトショーと、最高の締めくくり
宿に戻ると、ちょうどサウンド&ライトショーが始まっていました。せっかくなので屋上テラスへ。そこには、すでに何人かの宿泊客が夜空を見上げていました。

カラフルな光線がピラミッドとスフィンクスを次々と照らし出し、昼間とはまったく別の顔を見せています。朝から歩き続けた疲れも忘れ、しばらく立ったままぼんやりと眺めていました。

しばらくして部屋へ戻り、改めてビールを一缶開けます。今度は冷蔵庫でしっかり冷やしておいた一本です。窓の外にはライトアップされたピラミッドがそびえ、部屋の中からでも光の演出が楽しめます。

冷たいビール片手に、ピラミッドのライトショーを独り占め。こんな夜が、旅の中にあっていいのか。
朝7時台の静かなピラミッド、クフ王の内部の闇、砂埃の中の喧騒、ぬるいビールの絶望、トゥクトゥクの爽快感——そのすべてが今夜の風景に溶け込んで、ひとつの記憶になっていく感じがしました。
古代のミステリーと、現代のシュール、そして地元の日常。すべてを詰め込んだ、忘れられない一日が静かに幕を閉じました。


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