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【エジプト旅行㊺】屈折ピラミッド内部体験・謎の果物プレゼント・メンフィス野外博物館レポート
サッカラの階段ピラミッド|最古のピラミッドと巨大葬祭複合体
メンフィスを後にし、次に向かったのはサッカラの遺跡エリア。チケットを購入し、広大な砂漠の向こうについにその姿が現れました。ジェセル王の「階段ピラミッド」です。

これこそが、約4,600年前(古王国時代第3王朝)に建てられた、現存する最古の大規模ピラミッド。ピラミッドの原点ともいえる存在です。これまで見てきたダハシュールの滑らかな面を持つピラミッドとは違い、巨大な階段を積み上げたような独特のフォルムが特徴です。
圧巻の石造建築:最古級の列柱廊を歩く
階段ピラミッドの周囲は、巨大な壁で囲まれた広大な「葬祭複合体(コンプレックス)」になっています。その規模は東西277メートル、南北545メートル。周壁の高さは約10メートルにも及び、この複合体全体が「王の来世のための世界」として設計されたとされています。
その入り口となるのが、こちらの重厚な門です。

中へ一歩足を踏み入れると、そこには息を呑むような光景が広がっていました。高くそびえる石柱が両壁にそれぞれ20本ずつ、計40本並ぶ「列柱廊」です。

実はこの建物、現存する最古級の大規模石造建築の一つとされています。それまでのエジプトでは泥レンガや木材を使って建物を作るのが一般的でした。しかし、このピラミッドを設計した天才建築家イムホテプが、建物全体を石造で建設するという当時としては前例のない挑戦を成し遂げたのです。イムホテプは建築家であると同時に神官・医者でもあり、その才能は後に「神」として崇拝されるほどだったとされています。
柱の表面をよく見ると、植物の束(パピルスや葦)を模したような細かい装飾が施されているのが分かります。これは、それまで木や葦で作られていた建築物の形をそのまま石で再現した名残とされていて、いわば石造建築の「最初の一歩」がここに刻まれているのです。4,600年以上も前に、これほど精巧で巨大な空間が設計されていたという事実に、ただただ圧倒されます。

この薄暗い列柱廊を通り抜ける時間は、まるでタイムスリップしているかのよう。壁の高い位置にはわずかな明かり取りの窓があり、柱の間から差し込むほのかな光だけが頼りです。ゆっくり進んでいくと、パッと視界が開け、巨大な中庭と階段ピラミッドがその全貌を現します。暗闇から光の中に飛び出すこの瞬間の演出は、4,600年前の建築家が意図したものだったのかもしれません。

思わぬ潜入と、暗闇の再会
列柱廊を抜け中庭に出ると、階段ピラミッドがより間近に迫ります。ピラミッドの手前には、地下へと続く深い通路の入口のような構造が口を開けていました。

入り口に誰もいなかったので、吸い込まれるように中へ降りていくと、奥から話し声が。そこには、本来入り口にいるはずの受付のおじさんと、先客の観光客が話し込んでいました。おじさんは私に気づき、「チケットを見せて」と一言。提示したものの、「このチケットはエリア入場用だ。内部に入るには別のチケットが必要だよ」と止められてしまいました。(……すでに入ってしまっていましたが!)残念ながら、ここで引き返し地上へ戻ることに。

⚠️ サッカラの階段ピラミッド内部に入るには、エリア入場券とは別に内部見学用のチケットが必要です。チケット売り場で事前に購入しておきましょう。
ピラミッドの外を歩いていると、北側に少し斜めに傾いた小さな石造りの構造物が目に留まりました。近づいてみると、その石壁に指が入るほどの小さな穴が二つ、不自然に並んで開いています。

「……何これ? 覗き穴?」
気になって穴に顔を近づけ、片目を押し当てるようにして中を覗き込んでみました。暗闇の奥、さらに別の壁に開いた小さな穴の向こうに、何かがこちらを向いているのが見えます。カメラのレンズをその小さな穴にぴったりと固定して撮影したのがこの一枚です。

暗闇の中、小さな穴の向こうからこちらをじっと見つめていたのは、このピラミッドの主、ジェセル王の像(レプリカ)でした。
これは「セルダブ」と呼ばれる王像安置所で、石壁の小さな穴は、王の魂(カー)が外の世界の儀式を見守り、捧げ物を受け取るための「覗き窓」として設計されたと考えられています。約4,600年前の王と、小さな穴を隔てて視線が重なる瞬間。静まり返った遺跡の中で、時空を超えて見守られているような、少し背筋が寒くなる体験でした。

番外編:砂漠の真ん中で「仁義なき値段交渉」
サッカラの観光を終え、心地よい疲れとともにカイロ市内への帰路についていた時のことです。運転手のムハンマドさんが、ハンドルを握りながら切り出してきました。
「さて、約束の代金をもらっていいかな?」
私は「OK。約束通り50ドル($50)だね」と返しました。すると、車内の空気が一変します。
「はあ!? 50ドルじゃないよ! 150ドル($150)だよ!」
ムハンマドさんの声が一段大きくなります。私も負けじと「いやいや、50ドルって言ったじゃん! だから乗ったんだよ」と応戦。この時は「何を言ってるんだ、このおじさんは!」と本気で思っていました。
「50ドルなわけないだろ!」とまくし立てるムハンマドさん。 「ホテルのツアーだって90ドルだった。150ドルは高すぎる!」と私。 「それは団体ツアーの1人料金だろ! 今日はあんた一人のプライベートツアーなんだよ!」
……えっ、そうなの?ホテルのツアーって団体ツアーなの? (;゚Д゚)
私は一瞬でパニックに陥りました。今まで「ホテルより個人タクシーの方が安いはず」と信じ切っていた土台が、ガラガラと崩れ落ちていく音が聞こえた気がしました。
ムハンマドさんの言っていることが「正論」に聞こえてきて、
自分がとんでもない勘違いをしていたような、
あるいは巧妙に丸め込まれているような——
何とも言えない感覚に陥りました。
追い込まれた人間の「覚醒」
ムハンマドさんは一日付き合ってくれた良い人でしたし、騙すようには見えませんでした。しかし、最大の問題は「今、財布に150ドルも入っていない」ということ。
ここから、車内での慎重な交渉が始まりました。もし怒らせて、どこだかわからない場所で降ろされたら一巻の終わりです。
「80ドル払うよ」 「No! 130ドルだ」 「本当に持ってないんだ。払えないんだよ」 「じゃあ、いくら持ってるんだ?」
私は「80ドルくらいしかない」と答えました(実際には、防犯のためにカバンの奥やポケットのあちこちにドルを分散させて隠していましたが、その時は自分でも正確にいくら持っているか把握できておらず、本当に必死でした)。
彼は少し考え込み、「わかった、100ドルで手を打とう」と提案してきました。
私は「……わかった。今ここで80ドル払う。残りの20ドルはホテルの部屋にあるはずだから、着いたら取ってくる。それでいい?」と返し、なんとか交渉成立。
不思議なのは、私はほとんど英語が話せないはずなのに、この時はなぜか会話が完璧に成立していたこと。人間、追い込まれると眠っていた能力が覚醒するのかもしれません(笑)。
ここからホテルに着くまでの間、私は車内で自分でも把握しきれていないお金を、カバンやポケットから必死にかき集めました。
結末:ぼったくられたのか、ぼったくったのか?
ホテルの前に到着しました。 ここに来るまでの車内で必死に荷物を探り、自分でも忘れていたカバンの見つけにくい場所に隠していたドルもかき集めたら合計で110ドルありました。そのドルから約束通り合計100ドルをムハンマドさんに渡しました。
すると、彼はそれを受け取りながら、事もなげに聞いてきます。
「チップはないの?」
「……いくら?」 「10ドルか20ドルかな」
手元に残った最後の10ドルを渡し、最終的に支払ったのは110ドル。ムハンマドさんは満足そうに去っていきました。
この時、私の頭の中は混乱していました。
「良い人だと思ってたのに、最初から騙すつもりだったのか?」
「それとも、私が最初から『150(ワン・フィフティ)』を『50(フィフティ)』と聞き間違えていただけなのか?」
真相は闇の中です。
ただ、一年以上経ってブログを書きながら、ふと思ったのです。
「これ、単なる私の英語力不足が原因じゃない……?」
「よくよく考えてみると、一日チャーターで50ドルって安すぎるよね……?」
もし彼が最初から150ドルと言っていたのだとしたら。「エジプトのタクシーはぼったくりが多いので気をつけましょう!」と散々発信しておきながら、最終的に後出しで150ドルの提示を100ドルに値切った私の方が、結果的に彼をぼったくったことにならないでしょうか?(笑)
観光自体は本当に素晴らしい体験で最高でした。
ただ、当時は自分のミスか相手の悪意か判断がつかず、少しショックで、この出来事はあまり深く思い返さないようにしていました。
でも、今となってはいい思い出です。
もしかするとムハンマドさんに悪いことをしたかもしれない——。
でも、最後はお互い笑顔でさよならしたので、きっと彼も満足してくれていたはず。
……と信じたい(笑)。
皆さんも「50(フィフティ)」と「150(ワン・フィフティ)」の聞き間違いにはくれぐれもご注意を!
ちなみに「15(フィフティーン)」と「50(フィフティ)」も、思っている以上に聞き間違えやすいので要注意ですよ。(; ゚Д゚)σ
サッカラ遺跡エリア 基本情報
| 場所 | カイロ南西約30km・古代メンフィスのネクロポリス |
| エリア入場料(外国人) | サッカラ遺跡+イムホテプ博物館:大人600EGP・学生300EGP(2024年11月時点) |
| その他の入場料 | 貴族の墓・新王国時代の墓:大人400EGP・学生200EGP/セラペウム:大人340EGP(2024年11月時点) |
| 内部見学 | 階段ピラミッド内部はエリア入場券とは別チケットが必要 |
| 主な見どころ | ジェセル王の階段ピラミッド・列柱廊・セルダブ(王像安置所)・セド祭殿・ウナス王のピラミッドなど |
| 所要時間 | 約1〜2時間 |
| アクセス | カイロ市内からタクシーで約40〜60分。ダハシュール・メンフィスとセットで回るのが一般的 |
| 注意点 | 敷地内に売店・カフェなし。日陰もほぼないため、水・帽子・サングラス必須 |
⚠️ 入場料はエジプトの観光地全般で値上がり頻度が高いため、訪問前に最新情報をご確認ください。また、エリア入場券と内部見学チケットは別売りなので、チケット売り場で必ず確認を!
🚕 タクシー利用時の注意
料金は乗車前に金額を紙やスマホのメモで見せ合って確認するのが安全です。「50(フィフティ)」と「150(ワン・フィフティ)」のような聞き間違いは本当に起こります。不安な方はツアーやホテル経由の手配も検討してみてください。
サッカラの階段ピラミッド、こんな人におすすめ
正直に言うと、サッカラはギザの三大ピラミッドほどの「圧倒的なスケール感」があるわけではありません。でも、だからこそ刺さる人にはめちゃくちゃ刺さる場所だと思います。
ギザが「すごい!でかい!」なら、サッカラは「なるほど、ここから始まったのか」という感動。約4,600年前、人類が初めて巨大な石造建築に挑戦した場所に立っているという事実は、静かだけど確実に胸に来ます。観光客もギザに比べればずっと少なく、砂漠の静けさの中でじっくり遺跡と向き合える贅沢があります。
特におすすめしたいのは、ダハシュールとメンフィスをセットで回るコース。ピラミッドの進化を「階段ピラミッド→屈折ピラミッド→赤いピラミッド」と時系列で体感できるので、古代エジプト人の試行錯誤が肌で感じられます。私のようにタクシーをチャーターして回れば半日で十分回れますが、値段交渉だけはくれぐれもお気をつけて(笑)。
交渉が不安な方や効率よく回りたい方は、サッカラ・ダハシュール・メンフィスをセットにした現地ツアーを利用するのも手です。事前に料金が確定しているので、余計なストレスなく観光に集中できます。
👉 サッカラ・ダハシュール・メンフィスの現地ツアーはこちら
- KKday:日本語対応ツアーが多く、初めての海外でも安心。サポート重視の方におすすめ
- GetYourGuide:口コミ数が多く、評価を見ながら選びたい人向け。定番ツアーが豊富
- Trip.com:価格が比較的安めでコスパ重視派におすすめ。セールが出ることもあり


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