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【エジプト旅行㉙】アスワン到着|ヌビアンスタイルのゲストハウスとナイル川の絶景
深夜3時15分、アラームの音で起きました。今日は今回の旅のメインイベントのひとつ、アブ・シンベル神殿へ向かう日です。しかし、この朝は予想外の展開が待っていました。
朝4時前のナイル川と、静かな出発準備
4時のお迎えに間に合うよう準備を整え、宿の外へ。朝4時前のナイル川は、驚くほど静かで、それでいてハッとするほど美しく輝いていました。

送迎車が宿の目の前まで来られるか分からなかったため、集落へ続く唯一の入り口まで移動し、3時50分にはスタンバイを完了。道中では商店の冷蔵庫が外に出しっぱなしになっているのを見て、「ここは治安がいいんだな」と感じるほど、その時の私はまだ余裕がありました。

来ない迎え、募る不安
しかし、約束の4時を過ぎても、車のライト一つ見えません。
「まさか、来ないのか?」
1分、また1分と時間が過ぎるたびに、心臓の鼓動が早まります。もしこの車が来なかったら、今回のエジプト旅行の柱として組んだスケジュールがすべて崩れてしまう。明日の朝にはカイロ行きの飛行機に乗らなければならず、チャンスは今日しかありません。暗闇の中、少しでも遠くが見通せる場所まで歩いてみましたが、人の気配も車のエンジン音も全く聞こえてきませんでした。
暗闇の中での必死の悪あがき
到着予定から15分が経過した頃、心の中では「もう来ないだろう」という冷酷な確信が99%を占めていました。けれど、どうしても諦めきれません。
- 4時以降に出発するバスはないか?
- 市街地まで出て、タクシーと直接交渉するか?(でも、法外な額を吹っかけられるだろう……)
スマホを握りしめ、藁にもすがる思いで「今から申し込める今日のツアー」を必死に探しました。アブ・シンベル神殿は、ギザのピラミッドや王家の谷と並び、私にとって「絶対に外せない場所」だったからです。
繰り返される「予約不可」の通知
ついにAgodaで「午前9時出発」のツアーを見つけ、一縷の望みをかけて即座に申し込みました。しかし、届いた返信は無情なものでした。
『申し訳ありません。予約を確定できませんでした。』

諦めきれず、二度、三度と申し込みを繰り返します。結局、合計5回トライしましたが、結果はすべて同じ。冷静になれば、4時間後に出発するツアーが当日の早朝に取れるはずもありません。しかし、その時の私は、それほどまでに必死で、それほどまでにアブ・シンベル神殿に行きたかったのです。「絶対に外せない場所」だったのです。
悔しくて、悲しくて、何とも言えない感情が込み上げる中、アスワンの夜が明けていこうとしていました。私はただ、力なく宿へと戻って行きました。
5時50分、ついに訪れた「諦め」
宿に戻ってからも、私はしばらくスマホを握りしめたままでした。アブ・シンベル神殿に行けないのなら、ここアスワンに来た意味がない——。そんなことを考えながら検索を続けていると、時刻は5時50分。外はすっかり明るくなっていました。
「……もう、無理だ。」
ようやく諦めがついた時、目に飛び込んできたのは、朝日を浴びてキラキラと輝くナイル川でした。その美しさに、少しだけ心が軽くなったのを覚えています。気分を紛らわすため、朝の空気の中、ナイル川沿いを散歩しながら今日の予定を立て直すことにしました。

イシス神殿(フィラエ神殿)への転換
当初の予定では、アブ・シンベルから戻った後に「時間が余れば行こう」と考えていたイシス神殿(フィラエ神殿)。皮肉にも時間はたっぷりあります。今日はここを目的地に据えることにしました。
💡 イシス神殿(フィラエ神殿)とは?
アスワン近郊のナイル川に浮かぶ島に建つ神殿で、「ナイルの真珠」とも称される美しさを持ちます。もともとフィラエ島にありましたが、アスワン・ハイ・ダム建設による水没の危機を受け、1980年にユネスコの支援によってアギルキア島へ移築・保存されました。現在はアギルキア島を「フィラエ島」と呼んでいます。世界遺産「アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」の構成資産のひとつです。
この神殿はナイル川に浮かぶ島にあるため、上陸するにはボートが不可欠。しかしこのボート交渉が「エジプト旅行・難関ポイント」のひとつで、往復の運賃に加え、見学中に島で待機してもらう時間も交渉しなければならず、かなりのぼったくりが横行しているという噂でした。
Googleマップに載っていない「秘密の近道」
地図を確認すると、宿からボート乗り場は目と鼻の先。しかし道がないため、車なら5分・徒歩なら29分の大回りを強いられると表示されます。「下見がてら、裏側から覗いてみよう」そう思って歩いてみると、小さな脇道を発見。なんとそこは、ボート乗り場の裏側へ直結する近道だったのです。

オープン時間と入場料を確認し、ボート乗り場への道も確認できたので一度宿へ戻ることにしました。グーグルマップでは6時からとなってますが現地の案内では7時からとなってました(2024年11月時点)

宿の前で始まったまさかのボート交渉
一度宿に戻り、オープン時間の朝7時を待って再出発。すると、歩き始めてすぐに地元の男性から声をかけられました。
「どこへ行くんだ?」
「イシス神殿だよ」
「俺の船で行かないか?」
まさか、ボート乗り場に着く前に交渉が始まるとは!宿の目の前、歩き始めて10秒ほどの場所でのことでした。
ネットの情報ではボートの相場はバラバラ。ボートは1隻貸し切りの料金なので、一人旅の私は圧倒的に不利な状況です。最初は案の定、吹っ掛けた価格を提示されましたが、粘り強く交渉を続けました。その結果——
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 交渉成立価格 | 500EGP(約1,500円) |
| 含まれるもの | 往復運賃+神殿での1時間待機 |
| メリット | 乗り場まで歩く手間ゼロ。目の前のボートですぐ出発。帰りも宿の前で降りれる |
正直、理想は高くても400EGPくらいでした。それでも、ボート乗り場まで歩いてさらに別のボートと交渉する手間を考えれば、時間を買ったと思えばそこまで悪くない条件です。しかも降りる時も宿の前で降ろしてもらえます。

貸し切りボートで「逆走」入場という珍道中
交渉成立後、すぐに出発です。ボートは私一人の完全貸し切り。本来なら、陸路でボート乗り場へ行き、入場料を払ってからボートをチャーターするのが正規のルート。しかし私の場合は宿の前で先にボートを確保してしまったため、「ボートに乗ってチケットを買いに行く」という、なんとも不思議な順番になってしまいました。
ボートが乗り場に到着すると、そこにはさらにシュールな光景が。水路から上陸した私は、本来の「入口」であるはずのゲートを中から外へと逆走し、チケット売り場の列に並び直すことに(笑)。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 入場料 | 550EGP(後日カード明細で確認・1,776円) |
| 支払い方法 | クレジットカードのみ(現金不可) |
悔しさを抱えたまま、ナイルの風に吹かれて
チケットを手に、再び待たせておいたマイ・ボートへと戻ります。これでチケットもボートも準備万端。いよいよ「ナイルの真珠」と称されるイシス神殿(フィラエ神殿)へと向かいます。

正直なところ、アブ・シンベル神殿に行けなくなったことへの悔しさや喪失感が、すべて消えたわけではありません。暗闇の中で何度も予約を試みた、あの時の必死な思いを振り返ると、今でも胸が締め付けられるような気持ちになります。
けれど、いつまでも立ち止まっているわけにはいきません。朝日を浴びてキラキラと輝くナイル川を眺め、ボートのエンジン音を聞いていると、少しずつですが前を向こうという活力が湧いてきました。
思わぬハプニングから始まった、この「イシス神殿への冒険」。期待と少しの興奮、そして消えない悔しさを半分ずつ胸に抱えたまま、貸し切りボートはエンジン音とともに島を目指します。

アスワン・アブシンベルのまとめ記事はこちらの記事で紹介してます。
→【アスワン観光まとめ】アブシンベルの行き方・フィラエ神殿・宿選び・移動手段を解説


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